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「障害児を生んだ親は反省しろ」で炎上の医師も…広がる生の選別と障害者差別の思想

 さらに愕然とするのは、この内海医師に対して「障害があるとわかって産むのもおかしい」「言ってることは間違ってない」「一生国に迷惑かけるんだからね わかっていて生む奴は批判されて当然」などという肯定的な意見が目立つことだ。

 こんな差別丸出しのグロテスクな意見が大手をふってまかりとおるとは……。しかし、こうした「障害児は生むな」という反応は、近年、とみに増えている。とくに、妊婦の血液を採取して胎児の染色体や遺伝子を調べる「新型出生前診断」が2013年4月から導入されるようになってからは、“異常が分かれば中絶すればいい”という意見が散見されるようになり、事実、導入開始から1年半で1万2782人が出生前診断を受け、羊水検査などで異常が確定した176人のうち、人工妊娠中絶をしたのは167人、妊娠を継続したのは4人という。

 内海医師は障害のある子を育てることを〈試練〉と表現したが、出生前診断の結果による中絶率の圧倒的な高さを見ても、多くの人が「障害をもった子は生めない」と考えていることがわかる。だが、なぜ障害をもった子を生めないと思うのか、その社会的背景が論じられることは少ない。

 今年3月に発売された『「共倒れ」社会を超えて 生の無条件の肯定へ!』(筑摩書房)は、こうした問題と真正面から向かい合う。著者である野崎泰伸氏は自身も〈肢体に先天的な障害〉をもち、現在、立命館大学大学院で教鞭をとる倫理学を専攻とする学者だ。

 野崎氏は、この出生前診断について、〈じつはこの社会は、「新型」検査が、生命の選別を行うツールであるということから目を逸らしているのではないか〉と指摘。そして、問題の本質は〈費用対効果の良し悪しをひとつの判断基準とする制度設計をし、障害があるとコストがかかるという理由で〈望ましくない生命〉であるとする優生思想にあります〉と述べる。

 まず、よく知られているように、ナチスドイツにおいては優生思想に基づいて〈「生きるに値しない」重度の障害者や遺伝病、あるいはアルコール依存の人たちをガス室に閉じ込め、抹殺した〉という歴史がある。他方、日本でも同様、戦中に「国民優生法」を施行し、障害をもつ人々への不妊手術を実施した。さらに戦後には「優生保護法」と名を変え、〈「不良な子孫」を産ませない〉政策がとられた。しかも、「遺伝性疾患」に加えて、精神病や精神薄弱、ハンセン病なども対象となり、本人の同意もなく行われた不妊手術の件数は、法改正がされた1996年まで約1万3000人にのぼる。

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