『ワタミの初任給はなぜ日銀より高いのか? ナベテル弁護士が教える残業代のカラクリ』(渡辺輝人/旬報社)
例年よりスタートが遅くなったことで、就職活動続行中の学生もまだたくさんいるようだが、この就活で気をつけたいのが求人の募集要項の「初任給」だ。
「初任給」とは、ご存知、就職後最初にもらえる給料のこと。企業のホームページ、就職情報サイトの募集要項、ハローワーク(公共職業安定所)の求人情報などでも公表されており、会社選びの重要な判断基準のひとつとされている。「平成25年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省調べ)によると、大学卒の平均的な初任給は19万8千円、高校卒15万6千円となっている(ともに男女計)。
初任給が高ければ高いほど入りたい企業と考えがちで、このためにブラック企業のワナが仕掛けられがちだ。たとえば、居酒屋チェーン大手のワタミ。同社の100%出資子会社で居酒屋などを経営するワタミフードサービス株式会社の大卒求人の募集要項をホームページで見ると「店長候補」の初任給は「24万2326円」となかなかの高額なのだ。
しかし、ワタミと言えば、ブラック企業中のブラック企業。ワタミは「地球上で一番たくさんの“ありがとう”を集めるグループになろう」といったグループスローガンを掲げ、「社員の幸福」「夢を叶える」といった美辞麗句をうたっているものの、ワタミの社内冊子『理念集』では、「365日24時間死ぬまで働け」「出来ないと言わない」などと社員に呼びかけ洗脳。徹底したコストカットと低賃金で異常な長時間労働を強いる経営を行なってきた。
また、2008年6月には、4月に新卒で入社したばかりの居酒屋店舗勤務の20代女性に1カ月の残業時間が140時間という過酷な労働を強いて(国が認定している過労死ラインは「残業80時間以上」)、長時間労働、長時間拘束により抑うつ状態に追い込み、あげく、女性は自宅近くのマンションから飛び降り自殺をした事件も発生している。
そうしたこともあり、弁護士や学者、ジャーナリストなどの識者が選出する「ブラック企業大賞2013」で大賞に選ばれ、ワタミ創業者である渡邉美樹のブラック経営理念にも批判が集まり、客離れを招き、経営悪化。今年2月9日には、2015年3月期通期の連結最終損益が70億円の赤字(前期は49億円の赤字)になる見通しだと発表した。
この“ブラック企業”ワタミの初任給が「24万2326円」! 「銀行の銀行」、日本の中央銀行である日本銀行の初任給「大卒総合職20万5410円」と比べても高額ぶりはわかるだろう。