タイトルは「ハローワーカー」。現在、第2話まで公開されており、いちおうの完結をみせている。
第1話では、フリーターの男性が、交際している女性を妊娠させるも、女性の両親に「定職についていない」ことを理由に結婚を拒否され、ハローワークに向かうところから始まる。ハローワークで男性は、「国家公務員」になることを勧められる。その「仕事」は少子高齢化により増加している「高齢者」たちを「駆除」することだった。それは法的枠組みとして、以下のように作中で解説されている。
〈失業者を雇用し、高齢者を駆除させる。高齢者にかかる年金・医療・福祉雇用を大幅に削減し、出産・育児、教育に活用する。「老人駆除法」は我が厚生労働省が導き出した年金・雇用・少子高齢化などを一挙に解決できる特効薬…多少の副作用など問題にならん〉(「ハローワーカー」より。句読点は引用者による)
マチェットや重火器などで、老人たちを次々に殺害していく主人公だが、第1話の結末で、殺害された老人の親族らしき人物によって殺害され、幕を引く。やや唐突な印象はいなめないが、作画力は素人とは思えないほど高く、漫画作品としての完成度は決して低くない。
この漫画のテーマを一言で言えば“世代間格差”となるだろう。作品のなかで印象的なのは、多数の「高齢者」を若い世代である主人公(=ハローワーカー)が大量虐殺する描写だ。じつはYは、ブログのなかでも、この大量虐殺を暗示するようなエントリーを残していた。
15年2月2日のエントリーで、秋葉原連続殺傷事件で死刑が確定した加藤智大死刑囚に触れ、こう書いている。
〈無双まとめ/1m~1.5mの短い槍状が最も有効か・・・入手、自作し易く安価/即席ならパイプにナイフをガムテープ等で固定/持ち手側は傘の柄のように突きにも引きにも力を入れやすい形状だと/扱いやすく奪われにくい/原始的で低能な犯罪にみられるが・・・/階段などの狭い空間、高低差を利用するなど場所、時間、/使い手によっては銃の乱射や爆弾テロより正確で被害も大きい〉
〈大きな音を発さないので避難が遅れる/ウイグルのように複数人で計画的に無双すると大人災になる〉(15年2月2日のエントリー・「無双」より)
この「無双まとめ」という表現は、おそらく、単体のプレーヤーキャラクターを操作して数百人の敵CPUをなぎ倒していくテレビゲーム(それは、ヒットした作品のタイトルを引用してファンから“無双もの”と呼ばれる)を意識しているものと思われる。
もしかすると、Yの心の奥底には、秋葉原事件の加藤死刑囚と同じような闇、格差社会へのルサンチマンが広がっていたのか。