さらに低金利時代で、生保会社の資産運用が販売した保険の予定金利を大きく下回る“逆ザヤ”状態となったため、持ち出しを避けたい生保会社は「保険の見直し」というかたちで生命保険の「転換」を促そうとする。
「『転換』で損をさせられた多くの人から相談を寄せられますが、『転換』で次の保険が良い保険になったのは、ただの1件もありませんでした。ひどい場合は、20数年間に『転換』を3~4回も繰り返させられ、その間に合計で1800万円以上も保険料を支払ったのに、保険料を支払い終わった時点で残った保障はたったの100万円になってしまった人も大勢いるのです」(同書より)
「転換」件数は2013年度だけでも459万件に及ぶという。著者が絶対に加入者のためにならないと指摘する「ダメ保険」を販売しているのも、加入者に対する詐欺的行為で契約を「転換」させ、損害を与える行為をしているのも「漢字系生保」が多いのだ。
さらに「保険料収入に占める責任準備金組入率(積立率)」が「漢字系生保」は低いのだ。「責任準備金」とは、将来加入者に返すために、生命保険会社なら当然積み立てておかなければならないお金のこと。一般的にはその年度の40%程度を積み立てていれば、その会社の経営状態は健全だとされている。この積立率に関して大手といわれる漢字系生保の数字が悪いのだ。なかには、「すでに破綻した保険会社よりも悪い会社がある」(同書より)ともいう。
たしかに、独立系のソニー生命の平均約55%、外資系のマスミューチュアル生命の約53%と比べても、漢字系生保は0%台から20%台と芳しくない数字が並ぶのだ。
「おそらくは『逆ザヤ』契約の補てんと箱物のために消費したのでしょう。普通の企業だったら、とっくに倒産している数字で推移しているような生保会社がたくさんあります」(同書より)
その場しのぎの自転車操業をつづけるが、破綻した場合にも、その保障は全額というわけではない。
「払い切れる範囲でしか払えないのです。(略)過去の破綻劇では、100万円の養老保険がたったの36万円になってしまった……というひどい例もありました」(同書より)
自分の「いざ」というときに備えた生命保険が、漢字系生保会社の延命に消えているのかもしれない。
(小石川シンイチ)
最終更新:2015.05.11 07:50