女性からの目線だけではない。同性(つまり男性)からの評価は、意外にもさらにわかりやすい。スポーツ担当の新聞記者はこんなことを言う。
「オリンピックに出場するアスリートたちの海外事情に関する知識はスポーツ関連に留まらないし、サッカー選手も欧州の文化や風習に詳しい人が多い。でもさ、日本のプロ野球選手なんて、クルマとオンナとマンガの話しかしないからね。試合の後は、焼肉喰ってカラオケ行ってキャバクラで大騒ぎ。もうバカじゃないかと」
女子力男子の先進性と比べると、まるで絶滅寸前の大型肉食恐竜を彷彿とさせる。
「消費」の観点から言ってもクルマ、バイク、タバコ、酒、パチンコと言った「男性型商品」の支出は右肩下がりに減少し、男性フェイスケア商品やボディケア市場は拡大の一途で、しかも飽和状態の女性向け市場に比べて、まだまだ開拓の余地が残されていることを本書は報告している。しかも日本発のこの傾向はアジアに飛び火し、中国では草食男子を表わす「小男人」が流行語になり、割り勘(中国語で「AA制」)も若い世代では広まっているという。女装する男子「偽娘」の登場も話題になった。
となれば女子力男子市場は日本はもちろん、まだ限定的であるにせよ国際的に拡大する「伸びしろ」があるとも考えられる。大変なビジネスチャンスが埋もれているかもしれない。そんな可能性を示唆しながら、著者はこう呼びかける。
「私もまさにそうですが、中年男性は意識的に、消費の主役に近づきつつある女子力男子に学んでいかないといけない時代になっているのです」
近い将来「女子力オヤジ」「女子力爺」が現れるのか? ない話ではなさそうだ。
そもそも女子力男子に違和感を覚えている今の中間管理職世代(40代後半から50代)の人々は、すっかり忘れてしまっている。自分たちが社会人デビューした時に世間から「新人類」(86年流行語大賞)と呼ばれたことを。サブカルに傾倒し、カイシャよりも個の在り方を尊び、ブランドファッションに身を包み大箱ディスコのドレスコードを潜り抜け、「アッシー」「メッシー」として自らの存在理由を見つけたことを。思いっきり社会に違和感をぶちまけ、既存の価値観をことごとく否定していたのが他ならぬ自分たちだったことを。それが若気の至りであったにせよ、そもそも自分たち以外の風変わりな世代のことをどうこう言える立場ではなかろう。
にもかかわらず先日、大阪府警が警官募集のために制作したポスター(おそらくGOサインを出したのは『そういう世代』)のコピーはというと、
「草食系より、大阪府警。」
だからそれじゃダメなんだってば。「より」じゃなく「でも」にしないとね。
(相模弘希)
最終更新:2018.10.18 03:42