■自民党の調査会での威しの効果は?
こうした流れを受けて、17日に自民党の情報通信戦略調査会にテレビ朝日の幹部が呼ばれる。おそらく「放送法違反」をちらつかせながら、テレビ朝日が第三者もくわえた検証委員会を立ち上げて検証することを求めるものと思われる。
それだけでも効果十分だ。テレビ朝日は萎縮し、ますます、政権の政策に対する報道姿勢は「慎重」なものになっていく可能性がある。再発防止の体制づくりや検証番組の放送まで求められるかもしれない。
特定秘密保護法や集団的自衛権、原発の再稼働問題などで政府自民党が進めようとする政策を疑問視する報道を繰り返してきたテレビ朝日。それが次第にできなくなっていく可能性が高い。
NHKも同様だ。政治の前で再発防止などを約束させられ、政府批判につながりかねない報道はまず局内でチェックされるような体制づくりが行なわれる可能性がある。その前に社会の闇を暴いていくような調査報道には慎重になっていくだろう。危ないものには手を出さないという事なかれ体質が広がる一方かもしれない。
そうなった時に、一番、不利益を被るのは誰か。いうまでもなく国民である。
調査報道の牙を抜かれ、報道機関が政権を批判できなくなったら、独裁国家と大差ない。「3歳で射撃」「5歳で戦車を操縦」などと自国に指導者の天才ぶりを報道するだけの北朝鮮のテレビを笑えなくなってしまうのだ。
(水島宏明)
■水島宏明プロフィール
1957年生まれ。ジャーナリスト。法政大学社会学部教授。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任後、日本テレビに入社。『NNNドキュメント』ディレクターや同局解説委員などを務め、“ネットカフェ難民”の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。近著に『内側から見たテレビ やらせ・捏造・情報操作の構造』(朝日新書)がある。
最終更新:2015.04.22 09:34