「放送法」を盾にメディアへの圧力を強める権力者たち(左・自由民主党公式サイトより/右・橋下徹公式オフィシャルウェブサイトより)
安倍政権によるテレビへの圧力がエスカレートしている。
『NEWS23』(TBS系)内で安倍晋三首相がアベノミクスに懐疑的な声をあげる街頭インタビューを「意見を意図的に選んでいる」と批判したのは昨年11月のこと。直後には、衆議院解散にあわせて自民党から各テレビ局に公正・中立報道を求める文書が送られた。総選挙後は『NEWS23』に続き、『報道ステーション』(テレビ朝日系)のアベノミクスに関する放送への注意文書送付。今年2月から3月にかけては『報道ステーション』古賀茂明氏の「I am not Abe」発言に対する圧力問題もあった。
そして、4月17日には自民党の情報通信戦略調査会がNHKとテレビ朝日の経営幹部を呼びつけ、事情聴取することも決まった。NHKからは『クローズアップ現代』のヤラセ問題、テレビ朝日からは『報道ステーション』での古賀茂明氏による政権批判を聴取するという。
こうして書き出すだけでも頭がクラクラしてくるが、政府や政治家がテレビ局にクレームをつける際、根拠として頻繁に持ち出されるのが「放送法」だ。
今年3月には菅義偉官房長官が、『報道ステーション』での古賀茂明氏の「(官邸に)バッシングを受けた」という発言に対し、4条3項をもとに「放送法がある以上、事実に反する放送をしちゃいけない」と批判した。また2月には橋下徹大阪市長が、自身の掲げる大阪都構想への批判をエッセーに記した京都大学大学院教授・藤井聡氏について「藤井氏が、各メディアに出演することは、放送法四条における放送の中立・公平性に反する」などとテレビ各局への出演取りやめを要請していることが明らかとなっている。
放送法の条文を見ると、たしかにそのなかでは「不偏不党」や「公正さ」が要請されている。
・(一条二項)放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること
・(四条二項)政治的に公平であること
・(四条三項)報道は事実をまげないですること
・(四条四項)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること
しかし、番組のなかで政権批判が行われれば、それははたして「放送法違反」となるのだろうか? 言論法を専門とする専修大学・山田健太教授に話を聞きに行った。