左『殉愛』/右『百田尚樹「殉愛」の真実』
作家の百田尚樹が、歌手でタレントのやしきたかじん(享年64歳)の“後妻”家鋪さくら氏の証言をもとに書いた『殉愛』(幻冬舎)。この「純愛ノンフィクション」の嘘やデタラメを暴いた『百田尚樹「殉愛」の真実』(宝島社、以下『殉真』)の刊行から約1カ月が経ち、「殉愛騒動」は新たな局面を迎えた。
「さくらさんが宝島社を相手取り、『殉真』の出版差し止めの仮処分を裁判所に申し立てたそうなんです」(出版関係者)
出版差し止めの仮処分とは、個人の名誉やプライバシーを侵害する書籍や雑誌などの出版や販売等を禁止する、裁判所の仮処分命令のことをいう。2004年3月には、田中眞紀子衆議院議員の長女が、自らの離婚に関する記事を掲載した「週刊文春」の版元・文藝春秋に対し、同誌の出版差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。長女側の主張を認めた裁判所は、文藝春秋に対し、同誌の出版を差し止める仮処分命令を出した。記事を掲載した当該号は、すでに約70万部が出荷されていたが、残りの出荷予定だった3万部にストップがかかった。
もし、さくら氏の申し立てが裁判所に認められれば、今後、『殉真』を販売することが禁じられ、増刷できなくなる可能性も出てくる。もっとも、さくら氏は何を理由に出版差し止めを申し立てたのか?
筆者は今回、『殉真』の取材・執筆を担当した宝島「殉愛騒動」取材班の記者の1人に接触。記者によると、さくら氏は3月2日付で東京地裁に仮処分を申し立てたというが、驚いたのはその理由だ。
「申立書の中で、さくら氏は件(くだん)の『温井メモ』がたかじんの真筆、つまりは本物だと主張しています。そして、『温井メモ』はたかじんの著作物なのだから、それを『殉真』や月刊『宝島』の4月号で勝手に、しかも、たかじんの筆によるものではないとして公開したのは著作権の侵害にあたる……こうした理由で、『殉真』と『宝島』4月号の出版差し止めを求めているのです」(記者)