まさに現場で血を流すことを迫られる自衛官の本音がよくわかるインタビューだが、この自衛官によると、集団的自衛権容認の前から、自衛隊ではすでに変化が起きていたという。
「安倍政権になってから、内容が大幅に変わりました。人を標的とする訓練が始まりました。これまでは、相手を捕獲することが基本でしたが、もう今までと違います。軍隊としか思えません。
1年に2回だった実戦訓練は実際、増えました。人殺しは嫌です」
安倍政権になってから始まった「人を標的とする訓練」。具体的にそれがどういう訓練なのか、記事にはこれ以上は書かれてはいない。「沖縄タイムス」の関係者によると、実際のインタビューでこの元自衛官はかなり具体的なことも話していたが、特定されるおそれがあるということで、詳細は載せることができなかったという。
だが、第二次安倍政権が発足したあたりから、沖縄に駐屯している陸上自衛隊第15旅団の訓練内容が大幅に変わっているのは事実だ。
もともと、沖縄に駐屯する第15旅団は悲惨な戦争の記憶をもつ沖縄県民に配慮するかたちで、戦闘訓練よりも不発弾処理や緊急患者空輸などを活動の前面に出してきた。当初は、離島の防衛、奪還といった任務を担当する海兵隊的な組織の設置も検討されたというが、これも県民感情や中国を刺激することを避けるために、佐世保に駐屯する西部方面普通科連隊にその役割を担当させてきた。
だが、安倍政権が誕生すると、尖閣諸島防衛を大義名分に、南西諸島の防衛力強化が掲げられ、沖縄の自衛隊も離島防衛や奪還のための訓練をさかんにするようになっているのだ。
たとえば、2013年、沖縄の陸上自衛隊第15旅団の第51普通科連隊で、「水路潜入要員集合訓練」が2ヶ月半に渡って行われた。これは、他国に占領されている島にひそかに上陸して敵を撃退し、島を奪還する訓練で、これまでは、先述した海兵隊の役割をになう佐世保の西部方面普通科連隊など一部の部隊でしか行われていなかった。その訓練を沖縄の陸上自衛隊がはじめて行ったのだ。
他にも、やはり2013年に19年ぶりに沖縄県内でレンジャー教育を実施するなど、沖縄の陸上自衛隊は今、実践的な戦闘訓練を次々に本格化させている。
おそらく、こうした訓練の中で「人を標的にした訓練」が始まったのではないか、と推測される。たとえば、離島の奪還や市街地戦闘の訓練では、体にセンサーを付け、電波を発する銃などを使って撃ち合いをシミュレートする訓練も導入されている。チームに分かれて撃ち合い、何人殺したのかを競うのだという。