〈「ああっ、徹さん、大きい」
自分の膣に男根が入ってくるという驚きと恐れが綯い交ぜになった複雑な感情と、物理的に太く長い肉棒が自分の体の中に入ってくる痛みを伴う行為に、自然と出た言葉だった。〉
初体験、たった1回のセックスの様子が12ページにもわたり延々と記述される。その後も花菜のもとに足しげく通う徹とのセックス描写が繰り返されるのだ。自伝というよりまるでエロ小説。
もちろんそこには自身の“名器自慢”も挿入される。
「締めつけが凄いよ」「花菜ちゃんのヴァギナは神様からのギフトだね」
木嶋被告は法廷でも、「テクニックではなく女性として本来持っている機能が高い」などと名器自慢をして世間を驚かせたが、本書は法廷同様、いやそれ以上の名器自慢と男性からの賛美、そして彼らとのセックスシーンで埋め尽くされるのだ。
高校を卒業し、上京した花菜の男性遍歴とその自慢はさらにエスカレートしていく。10歳年上の“健ちゃん”と付き合いながら、別のアッシーのような存在の男性とも性交渉を持つ。性的関係はないが甲斐甲斐しく尽くしてくれるパトロンのような年上の男性もいる。高級な食事や上方落語などの文化にも触れさせてくれ、VIPなおじさまを紹介してくれた。そして上京から1年後、一流の男性たちを紹介する愛人倶楽部パピヨンにスカウトされ、複数のおじさまと愛人契約をし生活する様が描かれていく。
最初の愛人は50代の会社経営者“伊東さん”。高級フレンチでエレガントな会話を楽しみ、そして一流ホテルで関係を持った。
「花菜ちゃんとなら、動かさなくても勃起していられるよ。花菜ちゃんは絶世の美女に生まれつく以上にラッキーな能力を持って生まれてきたんだね。これは凄い」
他にも住職や弁護士と愛人契約をする花菜。セックスカウンセラーで花菜の内診をした産婦人科医からは「一度だけでいいから」と拝み倒されその性器を絶賛された。
「私は、何万人もの女性を内診してきたけれど、こんな膣は初めて触れた。IUDを挿入した日の内診で、医療用グローブ越しにもわかったんだが、これは凄い」
その後も池袋のデートクラブに登録して乱交パーティに参加したり、またナンパされたり、仕事で知り合った同世代の大学生など数多くの男性と関係を持つ花菜。男性たちは一様に花菜を賛美する。そして彼らとの関係は小説でこう総括されている。