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オウム真理教裁判のデタラメを林泰男の弁護士が告発! 量刑の不平等、封印された取調の暴行…

 さらに特別チームの何人かを上九一色村に張り込ませ内偵までしていたというのだ。もちろんこれらは地下鉄サリン事件以前のことだ。その上でこう記している。

「林郁夫の自白がなくても、警察の一部はサリンがオウム教団によって生成されたことをほぼ推定していたのである。だからこそ読売新聞がスクープ記事を書けたのである。林郁夫の供述は地下鉄サリン事件の実行犯を特定するだけでしかなかったのである。どうしてこの程度の内容で自首軽減とするのか」

 その疑問は一人の死者も出さなかったにもかかわらず死刑判決が下された横山真人との比較においてもなされていく。

 横山は東京メトロ丸の内線池袋行きの列車でサリンを撒いたが、しかし2つの袋のうち1つしか穴を刺さなかった。そして裁判では心からの反省を示し、被害者救済支援金に300万円を寄付した。さらに不法な暴力的取り調べを受けていた疑念まで示唆されている。

「(弁護人は裁判で)警察官によって作成された調書の任意性(横山が警察から何らかの形で強制、拷問、脅迫されて。精神的に自立した状態でなかった上で供述したことを指す)を争っている。事実は断定できないが、横山は捜査段階で警察官に暴行を加えられ、歯が欠けるほどのケガを負った後遺症があるようである」

 本書では他の実行犯たちが法廷で暴行を受けたことを訴えた例がないことから、横山の主張は信憑性が高いと示唆され、警察からの暴行に対し弁護士が国家賠償請求を勧めたが、横山自身はサリン事件被害者のことを考えれば訴訟など起こしたくないとこれを断ったという。

「裁判所は、弁護側の主張を簡単に退けているが、もう少し慎重に審理すれば、酌量軽減されたかもしれない事案だった。(略)横山のように死者がゼロであっても林泰男のように死者が八人である場合とまったく同じ刑事犯罪になるという理論である。この理論を前提にした上で、なお酌量軽減されてもよかったのではないか、というのが私の意見である」

 司法取引、警察の暴行、判決批判──。ここまで踏み込んだ指摘が元判事の口から出たということの意味は重大だ。もちろん林郁夫、横山真人にしてもすでに刑が確定され再審請求もないことから、真相は闇に葬られたままだ。

 地下鉄サリン事件だけでなく一連のオウム犯罪は未だに解明されていない闇が多く存在する。オウムの背後に蠢く外国や反社会的組織の存在、捜査した警察組織の主導権争い、信者のなかに警察官や自衛隊員が複数存在、そして地下鉄サリン事件から10日後に起きた現役の警察庁長官だった國松孝次狙撃事件──。

 大きな爪痕を残したオウム真理教による無差別テロ事件だが、20年経った今、日本を取り巻く閉塞感、社会の不条理や理不尽さはさらに形を変えて若者たちを襲っている。オウム真理教事件とその背景について、今後もその検証は続けられるべきだろう。
(伊勢崎馨)

最終更新:2017.12.19 10:22

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