言っていることとやっていることがちがうのは、こうした点だけではない。
下村大臣は同書の中で「貧困家庭の子供は教育を受けられない。ディスレクシアやできない子のレッテルが貼られる」といい、さまざまな子どもがそれぞれの事情に応じて教育を受けられる制度の整備、そして貧困が生み出す教育格差をなくすことを主張している。
その言やよしだが、しかしこれも、下村文科相が今、教育行政でやっていることはまったく逆なのだ。小中一貫教育の制度化、塾や教育産業の学校経営促進、さらには公立学校の運営を民間に委託する計画まで。ようするに、公教育は最低限にとどめ、充実した教育を受けたければ金を払え、といわんばかりの教育改革を推し進め、「教育機会の制度的格差」をさらにエスカレートさせているのである。
そして、裏ではこの制度格差化で恩恵を得る塾や教育産業から、違法な団体を使って献金をかき集める──。これが下村大臣のやっていることなのだ。これでは「教育を食い物にしている」と批判されるのも当然だろう。
こんな文部科学大臣はすぐにでも退場してほしいものだが、官邸は西川農水相のケースとはちがい、下村文科相のことはなんとしてでも守る方針のようだ。
「安倍首相にとって、下村さんがもっとも親しいオトモダチであることはもちろんですが、もうひとつは、安倍首相自身にも同様の政治団体の届け出をしていない『安晋会』という後援会組織の疑惑があるからです。下村さんを辞任させたら、自分にも飛び火しかねない。この疑惑はメディアへの圧力を総動員して、つぶしにかかるでしょう」(全国紙政治部記者)
「週刊文春」は来週、第2弾を用意しているともいわれているが、新聞・テレビははたして圧力に屈せずに疑惑追及ができるのだろうか。これはもしかすると、日本の教育の未来にとって分水嶺になるかもしれない。
(野尻民夫)
最終更新:2017.12.13 09:38