搾取工場を生み出すユニクロの柳井正社長(「株式会社 ファーストリテイリング」トップメッセージより)
日本最大のアパレルチェーン・ユニクロを展開するファーストリテイリング(以下、ユニクロ)の柳井正会長兼社長がここにきてメディアでさかんに独自の経営哲学を語っている。
「日経ビジネス」(2月9日号/日経BP社)特集「善い会社 2015年版 いま必要とされる100社ランキング」でユニクロは2位に輝き、特集のインタビューの中で柳井氏は次のように語っている。
「私にとっての『善い会社』とは『長期的に成長し、収益を上げられる会社』だ。成長性と収益性が高ければ、顧客、地域社会、従業員、取引先、株主などすべてのステークホルダー(利害関係者)とウィンウィンの関係が結べる。」
こうした柳井氏のユニクロ哲学は従来から繰り返しているもので、目新しさはない。どうやら今回のインタビュー乱発は「ユニクロブラック企業」批判の再燃を恐れて、打ち消しに躍起になって引き受けたようだ。
というのも、1月11日に、中国における多国籍企業の活動を調査する労働NGO(本部・香港)・SACOMが発表した「中国国内ユニクロ下請け工場における労働環境調査報告書」では、ユニクロのブラックな労働環境が明らかにされたからだ。
ユニクロの製造取引先は世界に100社ほどあるとされているが、その70%は中国。SACOMが潜入調査した2社(Pacific社、Luenthai社)は下請け工場のなかでも重要な役割を担っている。Pacific社は、ユニクロのCSRレポート(2014年)でユニクロの経営手法”One Table Management”の例としても挙げられているほどだ。
今回の報告書によれば、Pacific社で月平均134時間、Luenthai社で月平均112時間の時間外労働が推計され、月の合計労働時間は300時間を超える事実が明らかになったのだ。
中国の労働法36条では、1日8時間、週44時間までという労働時間制限が設けられ、同法38条では、雇用者は労働者に最低週1日の休暇を確保しなければならないとも規定されている。さらに、41条では、時間外労働時間は月に36時間を超えてはならないと明記されているが、ユニクロの下請け工場では労働法を無視しているのだ。
なお、日本での標準的な労働者の労働時間は月間で約170時間程度。300時間となると、残業時間は130時間に上っていたことになる。これは月80時間という過労死ラインを圧倒的に超えているのだ。たとえば、ワタミで2008年に新入社員の飛び降り自殺があったが、この自殺は、月141時間の残業が原因だとして労働災害に認定されている。