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「男しか行けない場所=風俗」に女が潜入取材してみたら理不尽なことだらけだった

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『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イーストプレス)

 イケメン男優が少女マンガさながらの甘い設定でセックスまで見せる、「女性向けAV」が市民権を得た昨今。だがしかし、「女性向け風俗」はあるのかといえば、出張ホストなどはあるもののその存在がポジティブに語られることはない。

 やはり風俗はまだまだ男性のモノなのだろう。

 そんな風俗を女性が見たら、ぶっちゃけどうなのか。『母がしんどい』で知られるマンガ家・田房永子が数年前に体験した風俗取材の裏側を描いたコミックエッセイ『男しか行けない場所に女が行ってきました』(イーストプレス)を読むと、エロ本などに載っている「風俗像」と彼女が見た「風俗の現実」の間に、すさまじいギャップがあることがよくわかる。

 マンガ家として駆け出しだった当時、エロ本に風俗レポートマンガを描いていた田房氏だったが、“無駄なものにびっくり”の連続だったという。

「レポート漫画家としては、『すごいですね、素晴らしいアイディアですね』と取材先の人たちに感服したけれど、ひとりの女としては、『なんて無駄なものが街中にたくさんあるんだろう』と思っていた」

 さらに描き続けるうちに、「本当に思ったことは書けない」ことに気づく。

 たとえばこうだ。風俗嬢・マリンちゃんに性感帯を聞く田房氏だが、マリンちゃんは「乳首とか書くとそこばかり責められて嫌だから、肩って書いてください」と、田房氏のほうも見ずに答えるなどつれない様子。だがマンガには、そのまま書くことはできない。田房氏は苦悩した、そしてついに、答えをひり出す。

「エッチなお店で働く21歳ピチピチのマリンちゃん。なんと肩が性感帯というドスケベ敏感BODYの持ち主! 毎日お客さんにイカされちゃってるんだって」

 また人妻アロママッサージの店長(金村義明似)と、風俗嬢の人妻さんを取材したときだった。描いたマンガは「きゃっおちんちんがおおきくなっちゃった! なんだか私も…ヘンな気分…」といった内容であったが、やはりそこに至るまでには田房氏に受難が振りかかっていた。

 まずは店長の、「これは加藤鷹とかAV男優御用達メーカーのパンツなんですけどね」という得意ヅラや、そのご自慢のパンツを脱ごうとするので制止すると、「平気ですよ全然、チンポ見られるの慣れてるんで」と、見慣れていない田房氏のことなど全く意に介さないことなどを、さらりとかわすことから始まる。さらに取材終了後の、「肝心なのは舐めですから」という突然の店長のクンニ自慢には、「この年一番の放心を味わった」という。

「『本当のこと』は、私の中に虚しさとともに降り積もっていった」と、田房氏は語る。

 特にイライラが募ったのは、密着型理髪店という、理容師たちが胸やお尻を強調したピッチピチの服を着ているのを、全身鏡越しに視姦したり、洗髪中におっぱいが当たるか当たらないかのジラシ感を楽しんだりする理髪店に、男性編集者とカップルを装い潜入取材したときだった。

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