世論への影響も見逃せない。この日のイベントの第二部で野間氏と対談した古谷氏によれば、ネトウヨは本を読まず、動画をメインとして情報を仕入れるので、「『WiLL』の内容なんて全然読んでない」という。たしかに、ネトウヨ連中の言動をみると、活字なんてほとんど触れていないだろう。だが、古谷氏はこうも言う。「ネトウヨたちはタイトルと目次だけ読みます」
ようするに、憎悪を煽り立てる大量の「アイキャッチ」が、ネトウヨたちの背中を押し、小躍りさせ、ネットの中に、この国の路上に、ヘイトスピーチを溢れさせている。「タイトルはアイキャッチで、価値は中身で決まる」と花田サンはおっしゃるが、明らかに差別意識丸出しの「アイキャッチ」が当事者たちを苦しめ、萎縮させ、ネトウヨたちの差別を助長させているのだ。
ところが、花田サンにその想像力はまったくないようで、「どういうテーマが売れるかということでタイトルをつける。売れなければ話にならないから。雑誌も新聞もそう。当たり前でしょう」と、商売丸出しの論理で開き直るばかり。
しかも、最悪なのが、冒頭に紹介した「“ヘイト本”と批判することがヘイトスピーチじゃないか!」という逆ギレ発言だ。
実はこれ、ネトウヨがよく使う「“ネトウヨ”とレッテル張りをして馬鹿にするのはヘイトスピーチだ!」という論法と全く同じなのだが、そもそも「ヘイトスピーチ」という言葉の使い方が間違っている。
今さら説明するのもばかばかしいが、ヘイトスピーチというのは、悪口や批判のことではない。容易に変更のきかない属性――とりわけ人種、民族、あるいは性的マイノリティなどに対して、差別を助長し煽動する言説や言葉のことなんだよ。
たとえば本サイトが、安倍首相やネトウヨにたいしてどれだけ「クズ」とか「カス」とか言おうが、それはヘイトスピーチではない。差別ではなく、単に(下品な)批判にすぎないからだ。同様に、ネトウヨたちが我々に対して、どれだけ「反日サイト」「キチガイ極左サイト」とがなろうが、「WiLL」が民主党をどれだけ「売国政党」と喚こうが、これもヘイトスピーチではない。ただの悪口だ。
ようするに、花田サンはそんなこともわかっていなかったのである。そして、自分たちがこれだけ他人を傷つける差別表現を垂れ流しながら、自分たちへの批判に対して平気で「ヘイトスピーチだ」などといった被害妄想的な台詞を口にする。これが日本の右派論壇を仕切る編集者のレベルなのである。
このイベントで花田氏と対決した木瀬氏はこう言っていた。
「ある人が、ある属性を持っているだけで、“ここは自分が暮らす場所じゃない”と、そう思わせてしまうような本を、私はヘイト本と呼びます」
「仮に読者がタイトルを読み間違えているとしても、これは編集者の責任ですよ」
しかし残念ながら、花田編集長や右派論壇にこの言葉が届くことはなさそうだ。
(梶田陽介)
最終更新:2017.12.13 09:23