いずれにせよ天皇・皇后両陛下は、安倍政権が進める「集団的自衛権」も「改憲」も反対と考えていいだろう。そして前出の『東京ブラックアウト』によれば、「原発」も、ということなのだろうか。同書には、総選挙後の内閣総理大臣の任命に際して、天皇のこんな怒りの言葉まで記されている。
「私は断じて、加部さんを任命しません。議長から持ち帰って、もう一度、国会で首班指名をやり直してください」
さすがにこの部分はフィクションだろうが、「加部さん」(加部信造)が安倍首相をモデルにしているのは間違いない。
『東京ブラックアウト』にはもうひとつ、政界関係者が固唾をのんだシーンが出てくる。元経産官僚の古賀茂明と首相夫人・加部咲恵の“関係”だ。前作『原発ホワイトアウト』でもそうだったが、すべての登場人物が加部信造(安倍晋三)、小吹善明(伊吹文明)と仮名表記になっているのに、古賀茂明だけはなぜか実名になっている。
その古賀が首相夫人の咲恵と日常的にメールのやりとりをしているようすが描かれているのである。古賀と咲恵は原発問題に関心を持つもの同士として知り合った。咲恵は原発については夫と立場を異にし、慎重な姿勢を表明している。お互いにメールで情報交換するようになり、〈咲恵は密かに、古賀に好意を持っていた〉(同書より)というのである。
これも真偽のほどはわからない。だが、いずれにしても“95%ノンフィクション”の『東京ブラックアウト』が安倍首相にとって極めて忌々しい本であることだけは間違いない。
(野尻民夫)
最終更新:2017.12.09 04:54