「「広告企画なんだからあたりまえでしょ」と言われても、私、全然分かってなかったです。だって「かくかくしかじかにまつわるインタビュー」って言われて受けたから。「東村さん、anを宣伝してください」と言われない限り分からないです。」
「(後で)説明を求めたところで、ナタリーさんは、「ご存じの上かと思っていました」の一点張りでした。」
その後、東村氏はギャラ10万円を返すことにしたというが、どうにも気持ちがおさまらなかったらしい。彼女はブログでこんな違和感を表明している。
「漫画家を勝手にリスト化して、広告企画をぶち上げて、収入を得る手段にしているということは、正直とてもショックでした」
「その後いろんな方に話を伺い、こうしたサイトの多くが、【タイアップ広告記事】による収入を得て運営されていることを、恥ずかしながら、私は初めて認識しました。
私が知らない、ナタリーさんたちの業界の一般常識は沢山あるのでしょう。でも、それって… ちょっと変じゃないですか? 漫画の情報サイトが、漫画家使って、稼働させて、収入得るって…」
たしかに、東村氏の違和感は表現者としてしごく真っ当なものだ。メディアに登場して自分の作品をプロモーションすることと企業広告に協力する事はまったくちがう。実際、東村氏は自分が広告に出るということを拒否してきたようで、その理由をこう語っている。
「私の作品のキャラクターが特定企業の広告をすることはあっても、作者自身は企業の広告はふつうはしないということなんです。もちろん例外はあるかもしれませんが、その場合はその作者は、相応の覚悟をもって企業の広告塔になることを決めているはず。たとえば、私個人が「an」の宣伝キャラクターになったなら、もう一生、「an」をちょっとでもディスるようなシーンは、生涯描けなくなる」
それがなんの説明もなく当たり前のように広告に利用されていたら、怒るのは当然だろう。
ナタリーの創業者の大山卓也氏は今年夏に出版した『ナタリーってこうなってたのか』(双葉社刊)で、自分たちのベースになっているのが「(ニュースサイトとして)みっともないことはしたくない」というポリシーだと語り、だからナタリーでは「PV稼ぎのためのゴシップ記事や釣り記事を載せない」と胸をはっていた。また、ミュージシャンやマンガ家、芸人のファンでありたいと語り、「彼らを貶めるようなことは絶対にしたくない」と宣言していた。
だが、ナタリーが今回やったことは、自分たちのメディアで生み出したクリエイターとの信頼関係を無断で金儲けに利用したということで、それはとても「みっともないこと」ではないだろうか。