「新郎が最後のスピーチで、『私はこれからも日本を守ります!』と絶叫。すると会場から『妻も守れよ〜!』とヤジが飛んで、会場がドッと湧きました」。
「新郎によるあいさつがありましたが、内容は大半が仕事の抱負で、最後の言葉は『頑張ろうニッポン!』」。
「新郎新婦が退場、という場面で流れた音楽は、軍艦マーチ。ロマンチックというより、勇ましい退場シーンになっていました」。
「(披露宴に)参加予定の自衛官は、みんな激務明けで、家に帰れず職場から駆けつけた先輩もいるほどでした。(中略)感謝の言葉を贈る場面では、結構な数の先輩たちが寝ていました」
また、同号の別企画、自衛官と結婚した妻たちの覆面座談会では「今、結婚式の計画をしているんですけど、一番口を出してくるのが彼の上司」だと紹介される。
これらは雑誌では笑い話として語られているが、本当にそれで済ませられる話なのだろうか。
斎藤貴男『強いられる死──自殺者三万人超の実相』(河出書房新社)では、閉鎖空間での激務で多発するイジメによる自衛隊員の自殺をルポしている。若き海上自衛官は、上官たちから「バカ、バカ」と罵られ、事故死したと噂される先輩隊員のベッドを割り当てられ、酒を買ってこい、宮崎産の「百年の孤独」だ、おまえは「百年の孤独要員だ」とイジられ続けるなど、ひたすら虐げられる生活に耐えられず、自ら命を絶ってしまった。自殺した別の航空自衛隊員は、先輩隊員から叩く蹴るなどの暴行に加え、講義中の居眠りを咎められ「反省文を100枚書くか、辞表を出せ」と詰問されていたという。
自衛隊員の自殺率は、公務員全体の自殺率と比べて2倍と言われている。しかし、斎藤氏が最も懸念するのはその自殺理由だ。07年までの調査で自衛隊員の自殺理由として最も多かったのが「その他・不明」の52%。警視庁の自殺統計から内閣府が作成した「各年齢階級の合計に占める自殺の各原因・動機の割合」を見ても、「その他」にカウントされる自殺は各世代10%にも満たない。つまり、自衛隊には原因不明で処理される自殺がやたらと多いのだ。
上下関係/先輩後輩の範囲を逸脱していることにすら気づかない根からのマッチョ体質。そして、結婚式にまで職場から駆け込まざるをえない激務、これらを無関係だと言い切るのは難しい。しかも、遺族が裁判に持ち込んでも、彼らはなかなかイジメの事実を認めたがらない。国を守るための結束が、ただただ組織を守るために使われる。
実は、自衛隊という組織にとっては、隊員の結婚も同じような意味をもっているようだ。先の新聞記事に、お見合いイベントを自ら企画した一等陸佐のコメントが載っている。
「女性比率が5%だけで、男性にとって出会いが少ないのが自衛隊。国民の生命と財産を守るために、結婚して心の支えを持つことは大きい」
隊員の結婚がどうの、ではなく、正しい自衛隊隊員の務めとして結婚くらいしておきなさい、というお考えが見える。