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40歳以上のひきこもり100万人以上!高齢ひきこもりの社会復帰を阻むもの

 ひきこもりが孤立化・長期化しやすい原因は、「迷惑をかけるな」という風潮が強いため、本来必要な人が生活保護の申請をせずに家にこもってしまったり、ひきこもりの子を「家の恥」として隠すあまりに家族が支援の情報を阻んでしまったり、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることも多い。また、求職に前向きな人でも、違法まがいの怪しい求人や、語学力や資格などの“神様スペック”を要求する非現実的な企業の求人、待遇の悪さで離職率が高く何度も新規案件で回ってくる“カラ求人”など、機能していないハローワークが「ひきこもりからの『立ち直り』を阻害する」と、池上氏は指摘している。

 では、ひきこもりの「立ち直り」を促すには、どうすればいいのか。本書には、ひきこもり状態の人を対象に訪問診療を行っている静岡県の医療チームや、「ひきこもりの人や障害のある人などの社会復帰のために就労支援や機能訓練、地域の人たちとの交流の場」となる施設「こみっと」を開設した秋田県藤里町の取り組みなどを紹介している。もちろん、こういった専門家や行政の支援というのは、必要不可欠だろう。しかし本書を読んでいると、一番意識を変えなければいけないのは、ひきこもりの復帰を受け入れる社会の方なのではないかと感じさせられる。本書に登場する、元大手金融機関社員の男性は、社会復帰の際に身をもって知った感覚をこう話す。

「私が感じたのは、一旦、仕事を離れると人としての価値が下がったような扱いをされることです。理想的なのは、大学を卒業してから現在まで仕事が一貫していて、転職の回数も少なくて、途中のブランクがないこと。石油やガスのパイプラインじゃないですけど、継ぎ目がちゃんとつながっていて、途中で漏れていないことなんです」

 もともと日本は、退学・退職といった“社会からのドロップアウト”に非常に厳しいと言われている。しかし、いじめなどによる小中高生の不登校件数は17万件を超え、今から迎える大介護時代では「介護離職」も急増するという予測もある。人生において“空白”の時期がないという人は少なくなっていくだろう。社会から一時離れてしまった人を柔軟に受け入れる意識が浸透することが、彼を支援する制度を促し、孤立状態を脱する手助けになるのではないだろうか。
(江崎理生)

最終更新:2014.12.18 07:16

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