『別冊宝島2261 カジノ利権の正体』
「アベノミクス解散」で廃案となったものの、選挙後、必ず復活しそうなのが、通称「カジノ法案」こと統合型リゾート施設(IR)推進法案。安倍晋三首相が「アベノミクス成長戦略の目玉」と位置づけているだけでなく、出馬をとりやめた橋下徹大阪市長との間に、カジノをめぐる連携があると取沙汰されているからだ。
「直前まで衆院選出馬をほのめかしていた橋下市長が出馬を取りやめ、党首討論会でも野党の代表とは思えないくらいに、安倍首相べったりの発言をしているが、橋下市長と安倍首相を結びつけているのはカジノだといわれている。橋下市長のカジノ大阪誘致への執着は相当なものですから、菅義偉官房長官あたりがカジノを誘い水に橋下市長を口説いたんじゃないか、と」(全国紙政治部記者)
外貨獲得を実現し、多数の新規雇用を生み出し、その結果、大きな経済効果を発揮するといわれているカジノ。しかし、メリットだけではないのも確かだ。治安の悪化、反社会的勢力の介入、マネーロンダリングに利用される可能性、ギャンブル依存症患者の増加など、負の側面をいくつも抱えているのだ。
そもそも経済効果についても疑問の声があがっている。全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会・編『徹底批判!! カジノ賭博合法化 国民を食い物にする「カジノビジネス」の正体』(合同出版)で弁護士の吉田哲也氏は、日本のカジノが海外のカジノ運営業者に頼らざるをえないことを指摘したうえで、こう述べている。
「しかも、そもそも、日本のカジノ賭博は、日本国民の賭博客をあてこんだものである。海外のカジノ賭博業者の首脳陣は、カジノ賭博市場としての日本の魅力について、『日本の潜在能力を高く評価する』と発言している。ここでいう『日本の潜在能力』が日本人の蓄え、金融資産であることは想像に難くない」
海外からの観光客誘致のために設置されるはずのカジノだが、実際のところは、海外カジノ業者が日本人ギャンブラーから金を巻き上げる場所となる可能性が高いというわけなのだ。もし、カジノが解禁されれば、国民の資産はどんどん海外のカジノ運営業者に流出してしまうかもしれないのだ。
そして、同書ではギャンブル依存症の恐ろしさについて藍里病院医師・吉田精次氏が、こう説明している。
「一度依存症になると、脳には一生その回路が残る。そのため何年やめていても、ギャンブル依存症患者がギャンブルを『ほどほどに楽しむ』ということは不可能である。やり始めるとあっという間に元通りになると考えなければならない」
「ギャンブル依存症と診断がついたときは、それは個人の意志や人格の問題ではなく、れっきとした病気(脳機能の疾患)であると認識することが必要である。しかし、まだまだギャンブル依存症に関心を持って治療に当たる精神科医が極端に少ないのが現状である。残念なことに、病気と診断されず、適切なアドバイスを受けることもできない状況が多々あるのだ」
現在の日本の医学界では、ギャンブル依存症の深刻さが的確に認知されていない状況があり、適切な治療が受けられない可能性が高いという。カジノが合法化されたのなら、当然ギャンブル依存症の対策を行う必要が出てくるだろうが、現時点ではあまりにも不十分すぎると言わざるをえない。
とにかく、デメリットが多いにも関わらず、安倍首相ほか多くの政治家たちが、カジノ合法化を推進しようと躍起になっているわけだが、一体カジノ合法化にはどんな“旨味”があるというのだろうか。