たとえば、カジノ建設を請け負う建設業者や不動産業者が潤うのは簡単に想像できる。そして、カジノゲーム機を製造するメーカーも大きな利益を得るだろう。さらには、IR施設にカジノ以外の“エンターテインメント”を提供する芸能事務所やテレビ局などが興味を示すのも納得できる。
しかし、カジノの合法化で潤うのはそういった民間企業だけではないというのだ。『別冊宝島2261 カジノ利権の正体』では、ノンフィクションライター・小川裕夫氏が、カジノ解禁で各省庁にも省益拡大のチャンスが訪れると指摘している。たとえば法務省の場合。
「法務省が狙うのは、訪日外国人観光客の増加に伴い、入国管理業務を拡大させることだ。現在でも法務省は入管の増員を提案しているが、IR法案を突破口にして権限の強化を目論む」(『別冊宝島 カジノ利権の正体』小川氏)
さらに、ギャンブル依存症増加を理由に、カジノ合法化に反対の立場をとっている厚生労働省もまた、カジノ合法化後の利権を模索しているとのこと。
「(厚労省によるカジノ合法化に対する反対は)自らの利権を確保するための反対だと見る向きが多い。というのも、IR法案成立、カジノ解禁となれば、ギャンブル依存に対してなんらかの対策は必須となる。厚労省はギャンブル依存症患者に向けた対策やケアを担当するNPO法人を立ち上げ、そのための予算を計上することで省益の拡大を図るとみられる」(『別冊宝島 カジノ利権の正体』小川氏)
依存症対策までをも利権とするとは、マッチポンプも甚だしいといったところ。表向きは「カジノ反対」と言っておきながら、心のなかでは全く逆のことを考えているという政治家も少なくなさそうだ。
また、治安の悪化や子供への悪影響を考えれば、どう考えてもカジノ合法化に反対しなくてはならないはずの文部科学省ですら、カジノ利権を狙っているという。その利権の温床とされているのが千葉県だ。
千葉県内では、成田空港がある成田市や幕張メッセがある千葉市などが、IR誘致に名乗りを上げているが、ここに「MICE」という概念で海外観光客取り込みを画策する観光庁が興味を示しているという。「MICE」とは、学術会議などを行うイベントホールや、スポーツイベント開催する競技場などを集約した施設のこと。つまり、観光庁は、学術会議やスポーツイベントのために来日した外国人向けのカジノを作り、大きな経済効果を得ようと考えているわけだ。
そんなMICEの利権を狙うのが文科省。『別冊宝島 カジノ利権の正体』によると、「(MICEには)文化施設やスポーツ施設関連の整備・管理が伴うため、スポーツを所管する文科省にも利権が生まれることになる」(小川氏)とのことで、カジノ頼りの観光政策は、文科省にまでメリットを生むというのだ。
カジノ関連業界が潤うだけでなく、様々な形で利権を生み、各省庁に食い込むスキを与えるカジノ。デメリットに目をつぶってでも、政治家たちが推進する裏には、こういったカラクリがあるようだ。