「東亜日報」ウェブ版より。日本政府による横田めぐみさん死亡の調査報告を入手と報じた
突如、浮上した衆議院の解散。このご都合主義の政治的暴挙によって、閣僚の政治と金、アベノミクスの失敗など、安倍政権のさまざまな失態や悪政がチャラになってしまうのは確実だが、もうひとつこのまま隠蔽されそうなのが、北朝鮮拉致問題だ。
「安倍首相は『拉致問題解決は悲願』とかいっていますが、最近はもっぱら真相をごまかし、覆い隠すような動きばかりが目立っている。解散もその延長線上で出てきたんじゃないかとふんでいるのですが……」(全国紙政治部記者)
その一端が垣間見えたのが、11月7日、韓国の大手紙「東亜日報」が報道した横田めぐみさんに関する「日本政府の調査報告書」をめぐる対応だろう。
同紙によると、2014年9月11日、日本政府の拉致問題対策本部職員が横田めぐみさんが死亡したとされる病院・平壌49号予防院に関係していた脱北者2人に面会。その際に作成された安倍内閣への報告書を入手したという。
実際、当日の「東亜日報」にはその報告書が掲載されていたのだが、そこには、横田めぐみさんが「1994年4月10日に劇物や薬物の過剰投与で死亡した」「遺体は国家安全保衛部党組織の指示で、トラクターに乗せられ、他の遺体5体とともに山に運ばれ、そのまま穴に埋められた」という記述があった。
現在、まさに拉致再調査をめぐる日朝交渉の真っ最中であり、もしこれが本当だとしたら、政権を揺るがしかねない重大事である。大きな騒動となるのは必至と思われた。
だが、「東亜日報」報道当日の7日、菅官房長官は「信憑性はない」と否定。すると、ほとんどの新聞、テレビは一切これを報道することなく、沈黙してしまったのである。日本のメディアで唯一、詳細を報道したのは「ハフィントンポスト」だけだった。
たしかに、この報告書には矛盾もある。めぐみさんの死亡日時についても、帰国した地村富貴恵さんの証言などと食い違いがあるし、死亡した女性が本当にめぐみさんだったという根拠も、「病歴書」の記憶と「私に、日本の故郷の住所を示して、自分の消息を知らせてほしいと頼まれました」という証言のみだ。