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真似るな危険!おじさんたちが憧れる伊集院静ダンディズムの正体

 また、大学進学を機にひとり暮らしをはじめたが寂しく、「毎晩地元の母に電話してしまいます。自分は自立できない人間なのではと、不安になります」という18歳の女性の悩みには、

「あなたはお嬢さんなのだから、自立、自立と思わない方がいいよ」「第一、女性が自立するなんて、つまらないことだよ」

 と、保守おやじらしさを全開。しかし、おやじの暴走はまだつづく。本領を発揮しているのは、もちろんエロネタである。“酒乱で、誰かれ構わずキスしたり服を脱いでしまう”という23歳・会社員女性の悩みには、

「悪くないじゃないか。君、イイヨ。大きい将来を感じるナ」「機会があったら一緒に飲もうじゃないか」「若いお嬢さんが酒に酔って、キスはして下さるわ、肌を見せて下さるわ……。そういう若い女性を、わしらは通常“天使”と呼んどるんだが」

 と大はしゃぎ。最後は「けど君、脱いだあとはどうなんだよ?」と綴っているが、これは相談の回答というより、たんなる下世話な興味である。

 くわえて、“優等生として生きてきた自分の性格を直したいという”39歳女性には、髪型や服装、化粧を変えることを提案したあとに、「そうだ、女性向けのアダルト・ビデオを見るってのも案外いいかもしれんよ。それで変われるかって? そりゃ君、見てから言いなさい」と、こちらもオヤジの模倣回答。飲み屋で隣り合わせたおじさんのような生々しさが漂ってくるようだ。

 だが、もっと恐ろしいのは、ある男性からの相談への回答にあった。42歳男性の“行きつけのメイドバーにタイプの若い女の子が入店し、ご飯に誘いたいが入店禁止にはなりたくない”という危険なにおいがする相談には、たった一行、「その子を連れて逃げなさい」。いやいや、それは危ないですってば……。

 ダンディズムというのはスマートなものかと思いきや、その実態は、やはりというべきか、純然たる“おじさんご都合主義”。こういう本がバイブルとなって、結果、若者に鼻つまみにされるおじさんが再生産されていくのかと思うと、ふしぎな切なさがこみあげてくる一冊だった。
(サニーうどん)

最終更新:2014.11.05 11:04

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