DVD『ブラックバイトに負けない! クイズで学ぶしごとのルール』(PARC)
「ブラック企業」が問題化して久しいが、今やその毒牙は学生アルバイトにまで迫っている。低賃金にもかかわらず正規雇用労働者並みの義務やノルマ、重労働を課される通称「ブラックバイト」が急増し、“使い潰しの若年化”が進んでいるのだ。
そんな中、ブラックバイトの被害から若者を守ることを目的としたユニークなDVDが発売された。『ブラックバイトに負けない! クイズで学ぶしごとのルール』。発売元であるNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)は「ブラック企業大賞」企画委員会にも携わっている団体である。
内容は、ドラマ仕立てのクイズ形式を交えながら、アルバイトをする際に最低限知っておくべき法律や知識を専門家たちが解説するというものだが、注目したいのは、同作の中に収録されている、学生たちによるブラックバイト体験談の数々。とにかく、唖然とするような理不尽な労働環境がめじろ押しなのだ。その一部をDVDから紹介しよう。
まず、明らかな違法行為であるのに意外とスルーしがちなのが、受け取るべき賃金の未払い。実際、この被害に会っているアルバイトは多い。
「月に2回ミーティングがある。強制参加で。でも時給が発生しない。面接で言ったというが、聞いていないってみんなも言うし、私も思ったし」(居酒屋バイト)
「お着物で仕事をしている。自分で着なきゃならなくて、経営理念の唱和、あいさつの仕方など全部やってからタイムカードを押す。1時間前には職場にいないと間に合わない」(会席料理店バイト)
仕事をするための着替え等を含む拘束は労働時間にあたると判例で認められている。にも関わらず、実際には賃金が支払われていないのだ。しかも出勤の記録をタイムカードで管理している店舗では、こんな姑息な手段が後を断たないようである。
「(タイムカードリーダーが)通常の時間より3分進んでいる。たとえば6時にアルバイトに行こうとすると、5時58分だとアウト。30分単位なので30分の時給が支払われない」(本屋バイト)
なんとなく文句をつけにくい風潮があるが、本来時給は1分単位で計算されるべきもの。こうした仕組みが常態化することで、事実上の拘束時間がむやみに増し、学生バイトの負担が増加してしまうのだ。しかも正規の残業代すら支払われないという恐ろしいケースも珍しくない。