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アイスバケツ、有名人に広がる“違和感表明”ブームに感じる違和感

 まず、ひとつ目は「三日坊主のススメ」。ボランティアは三日坊主でいい、という意味だ。大野氏によると、講演会などでボランティアの話を聞いて「やってみたいです」と意欲を見せるものの、95%近くの人が「でも、本当にできるかどうかよく考えてからじゃないと……。中途半端になるとご迷惑だから」と尻込みしてしまうのだという。そして、「たいていは来ない」。……これについて大野氏は、“中途半端になっても構わない”という。

「せっかく熱い想いがあふれたのに、それを時間の経過とともに風化させ、忘れてしまうのは、もったいない。チャンスを逃すことはないと思うのです」

 これはボランティアに限った話ではなく、チャリティにもいえることだ。たしかに今回のアイスバケツは一過性のブームに終わる可能性も高い。だが、多くの人にとっては一過性だとしても、これをきっかけに何万人かに1人でもALS支援に本格的に携わりたいと思う人が出てくるかもしれない。また、たとえ一時的に盛り上がって、そのうち忘れてしまっても、「微力でも自分も何かをした」「心を動かされた」という感情が“いい思い出”として残れば、また何かの機会に別のチャリティでもやってみようと思うかもしれない。……何もしないよりは、その瞬間だけでもやってみるほうが、ずっといいはずだ。

 そして、大野氏はふたつ目に「自己満足のススメ」を挙げる。というのも、「ボランティア=自己犠牲」と考えていると、他人のためにやってあげているのに感謝されないというストレスが溜まり、「自分はがんばっている」と主張すれば、まわりは引いていくばかりだからだ。逆に、「ボランティア=自己満足」と捉えれば、「生き生きとやりがいを感じ」られ、「「どんなことやってるの? 面白そうだから私もやってみようかな」と、人が集まってくる」。──アイスバケツも「はしゃぎすぎ」「遊んでるだけで不謹慎」など批判の声が挙がっているが、ゲーム性があって楽しそうだったからこそ、ここまで爆発的に広まったのだ。

 さらに最後の3つ目は、「売名行為のススメ」。今回のアイスバケツでも、もっとも集中しているのは「売名行為だ」という批判だが、これも大野氏は肯定する。

「ボランティアというと、つきものなのが「偽善者」という一言。「良い子ぶって、自分が目立ちたいだけじゃないの?」などと、足を引っ張る人が本当にたくさんいます。でも、そんな言葉には負けないでほしい。なぜなら、いいことは伝えないと、広がらないからです」

 アイスバケツが広がりを見せたのは、先に挙げたゲーム性とともに、多くのセレブが関わってきたからだ。そして彼らの参加がなければ、これだけ多くの人がALSについて、たとえ名前だけでも知ることはなかった。海外のセレブだけでなく日本の有名人が関わり始めたことで、身近に感じた人も少なくないはずだ。

 ビートたけしが「ボランティアっていうのは人知れずやるもの」と、アイスバケツを批判したことが顕著であるように、とかく日本では、ボランティアやチャリティを“名前を明かさず”行うことが美談として語られがちだ。だが、仮に「売名行為」だったとしても、活動の意志や目的が力をもっていれば、そんな「私欲」は飲み込まれて消えてしまい、結局は活動の精神だけが残る、と大野氏は語る。売名行為でもいい、“自分を使って”伝えている、と考えればいいというのだ。

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