いったい誰に頼まれてのフォローなのかよくわからないが、松ちゃんのフォロー係ぶりはこれでは終わらなかった。すでにネットニュースなどでご存知の方も多いと思うが、この日、ゲストの杉田かおるがコピペ騒動を受けて、こんな過激な発言をしたのだ。
「わたしの本も全部ゴーストの人が書いてくれてるんですけど、でもやっぱり内容は似てるので、楽しんでもらうために文章を変えるために、ゴーストの人を変えたりしてるんですね。だから、官僚のブレーンで、文章のうまい人や文章のおもしろい人を工夫されたらいいんじゃないですかね。同じ内容でも」
まさかのゴーストライター告白に、スタジオは騒然。井上公造レポーターも「ショック受けてます」とツッコミを入れる事態となった。
ところが、松ちゃんは杉田をイジるどころか、「でも多いですよね、そういう人」「(書いているのは別の人でも)でもそれは、杉田さんの真意じゃないことを書いてるわけじゃないんでしょ」「『私が書きました』ってべつに言ってるわけじゃないんですよね」と、ひたすらフォローし続けたのである。その必死さは松ちゃんが最後に自分で「なんで僕が杉田さんのフォローしてんやろ」とツッコミを入れるほどだった。
日韓関係の悪化がテーマの回で、中居正広が例の「韓国に謝ればいい」発言で炎上した時も同様だった。中居クンがアイドルという立場を顧みずに果敢に発言しているのに、松本はとにかく事を荒立てないような対応しかしないのである。
中居クンが韓流アーティストが最近、テレビに出なくなったことに対して「それって政治の……え、そういうこと?」と疑問を投げかけても、松本はこれに答えず、「隣国やからしょうがない部分はあると思うよ。別に我々ブラジルを嫌いになる理由もないから遠過ぎて」「201号室と202号室と住んでたらそりゃ色々あるやんか。壁も薄いし」と、あたりさわりのない話にすりかえる。
おさまらない中居クンがさらに「謝るところは謝ればいいんじゃないですか?」「(マンションの)隣同士で、騒音がうるさかったらね、そこは謝ると」「違うの?」「謝ったら負けとかそういうレベルなんすか?」と踏み込んでも、ただ苦笑するだけでとりあわない。そして、他の出演者と一緒に「そこが一番難しいところ」「お互いの言い分があるからねえ」と、“大人の対応”を取り続けたのである。
別に、中居クンの意見にのっかる必要はないが、だったら、逆に「韓国の方が謝るべきやろ」と、あえてネトウヨ的立場に立って中居クンと対立し、議論を盛り上げるとか、いくらでも方法はあったはずだ。ところが、松ちゃんは孤立無援の中居クンを援護射撃するわけでもなく、かといって中居クンを批判するわけでもなく、過激なコメンテーターにおろおろする局アナのような対応しかできなかったのである。
たしかに、松本がニュースには向いていないというのはあるだろう。私的な世界観へのこだわりの強い松本は政治経済の知識が乏しく、社会オンチの感もある。以前に「週刊朝日」(朝日新聞出版)や「週刊プレイボーイ」(集英社)の連載で時事問題を扱った時も、ピントはずれの発言が多かった。
でも、これらの連載をまとめた『遺書』『松本』(朝日新聞社)『プレイ坊主』『松本人志の怒り 赤版』『松本人志の怒り 青版』(集英社)などを改めて読み直すと、知識がなくて無教養であるがゆえに、議論の予定調和を根底からひっくり返すような過激さがあるのだ。