その後も、何度か離れるチャンスはあったものの、そのたびに拉致同然に連れ戻され、暴力によってMASAYAへの忠誠心と恐怖を植えつけられることになる。刷り込まれた恐怖と「お金はエネルギー交換」という詭弁によって、ToshIは全財産をホームオブハートにつぎ込んでいく。
セミナーやトレーニングへの参加、MASAYA関連の商品の購入のたびに高額のお金を支払い、心配した事務所側がお金を止めると、今度は消費者金融や友人に借金をしてまでお金を作っていたというから凄まじい搾取である。後期には守谷が個人事務所の取締役となって実権を握り、MASAYAの指令の下、すべての収入を奪われてしまう。この本のあとがきにも一文を寄せているホームオブハートの被害に詳しい紀藤正樹弁護士によれば、ToshIは「少なく見積もっても10億円以上のお金を奪い取られた」という。
皮肉にも、MASAYAが明らかにお金のためにX JAPANの再結成をするように指示をしたことが洗脳から覚めるきっかけとなったそうだが、洗脳から脱出しホームオブハートとの縁を切るためには妻・守谷との離婚調停、自己破産の宣言、マスコミにもすべてを公表したうえで弁護士を立てて争うという、更なる苦難を味わうことになる。
ToshIは洗脳にとらわれ続けた12年間をこう振り返っている。
「人間としての意志も、考えも、自由も、すべてを奪われてしまう恐ろしい地獄のような日々」
この本は、ロックスターの自伝であると同時に、洗脳の恐ろしさを詳細に綴った啓蒙書でもある。
(時田 優)
最終更新:2014.08.05 03:12