この義務教育による国民皆兵制度は、なにも日本の専売特許ではない。
最初に発案したのは、かのナポレオンなのである。騎士階層から兵権を奪い、国民軍で巨大な版図を築いたナポレオンは、「国家による国民の教育」が軍の強化につながると考えて実践。それを「啓蒙君主」として名高いプロイセンのフリードリヒ大王が取り入れ、欧米列強で普及した。日本は、明治維新後、これらの制度をそのまま取り入れたにすぎない。戦前の日本が戦争に突き進んだのも、高い基礎学力と体力、忍耐強く連帯意識も高く従順という「日本兵」が、1億人の人口からほぼ無尽蔵に生産され続けたためであろう。
日下氏の前著によれば、第二次世界大戦以降、欧米諸国では「義務教育による国民皆兵制度」を否定、どんな教育をするのかは国家ではなく親(保護者)が決めるべきと「教育権」を国家から奪い返した。そんな欧米人にすれば先進国で唯一、そして「敗戦国」である日本が「国家による教育権」を保持し、「義務教育による国民皆兵制度」を持続させている姿は、異様としか思えないだろう。
集団的自衛権を容認したいま現在にいたっても、国家による教育権の問題を指摘するメディアはない。戦後、平和教育を自称してきた日教組といえば相も変わらず、有能な「軍属」を育て続けている。終戦からもうすぐ70年、この機会に「教育権」についても考えてみてはどうだろうか。
(西本頑司)
最終更新:2014.08.02 08:04