これまで、シングルファザーに経済的な問題はあまりないと思われてきたが、実際には非正規雇用も増え、収入も減っている。父子家庭の平均年収は360万円だが、これは子どものいる世帯全体と比べ6割程度と少ない。しかも年収100万円以下というケースも増えており、シングルマザー同様、シングルファザーも貧困の傾向にあるという。
さらに困難なのは、シングルファザーは役所に行っても使える支援がなく、孤独感を深めることだ。あるのは女性の「母子自立支援員」であり、「母子家庭等就業・自立支援センター」だ。このネーミングからしてこれまで父子家庭が行政支援の対象外だったことが浮かび上がる。実際、「母子家庭等就業・自立支援センター」が父子家庭も対象にしたのは昨年の2013年から。また、母子家庭に支給される児童扶養手当が10年まで父子家庭は適用されなかったほどだ。
このようにシングルファザーもシングルマザー同様、いや社会的側面から考えればそれ以上の困難に直面している。もちろんだからといって、冒頭にあげたような、子どもを身勝手な理由で放置し、餓死させた父親が許される訳ではない。しかし、その背景には子どもを抱えた多くのシングルファザーの苦悩があり、それは現在も解決されていないことだけは認識しておきたい。
(伊勢崎馨)
最終更新:2014.07.29 04:00