そして次が、初の自伝的小説『東京タワー〜オカンとボクと、時々、オトン〜』(扶桑社)がベストセラーになった後。「もらった印税分は嫌な事があった」と語っているように、かなり重度の鬱状態におちいり、それ以降、ほとんど原稿を書けなくなってしまった。
こうしてみると、リリーは仕事で高い評価を受け、確固たる地位を築くと、とたんに鬱になってすべてを放り出してしまう傾向がある気がする。とすれば、『そして父になる』で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞し、NHKの土曜ドラマ『55歳からのハローライフ』では主演に抜擢されるなど、プロの俳優としてゆるぎない評価を得た今、リリーが、三たび鬱になり、俳優の仕事を「や〜めた」と投げ出してしまう可能性は十分あるかもしれない。
だが、仮にそうなったとしても、心配は無用。これまでをふりかえってみると、リリーは鬱になっても必ず、その後に復活を果たしているからだ。しかも、1回目の鬱の後は『東京タワー』、2回目の後は俳優として大活躍と、今までとはまったくちがうジャンルで、今まで以上の高い評価を得て、大活躍をしている。むしろファンにとっては、リリーがネガティブになったときは、新しいリリーが見られるチャンスともいえるくらいだ。
実際、「婦人公論」のインタビューでも、「昨年50になり、やったことのないことをやりたいと思っています」とも語っており、すでにリリー自身が新しく生まれ変わることを考えているフシも見受けられる。
そう考えると、リリーについて心配しなければいけないのは、「仕事をやめて介護マンションに引きこもっちゃうんじゃ……」ということではなく、もっとちがう事態かもしれない。
リリーといえば、これまでも宍戸留美、加藤紀子、安めぐみと、多くのアイドルや芸能人と噂になり、今もAKB48のバラエティ番組などに嬉々として出演している筋金入りのアイドル好き。その老後は孤独な介護マンション行きよりも、何十歳も歳の離れた元アイドルを嫁にもらうという“加トちゃん”的な展開のほうが実現確率が高い気がするのだ。そして、まさに加トちゃんのように、若い嫁にエネルギーと金をすいとられて、どんどん生気を失っていく。まあ、それはそれでリリーらしい老後といえるかもしれないが……。
(正田小夜)
最終更新:2014.07.13 12:36