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オウム・菊地直子の有罪判決、教団内の“性愛関係”暴露が影響!?

 そんなところから、この証言の背後には、井上被告の教団内の性愛関係に対する嫌悪感があるのでは、という向きもある。周知のように、オウム真理教の出家信者は「不邪淫」という戒律があり、配偶者以外との性行為や恋愛、オナニーが禁止されていた。ところが、現実はまったくちがっていて、男女が入り乱れて肉体関係をもつという、むしろ一般社会より乱れた状況にあった。

 佐木隆三著『大義なきテロリスト─オウム法廷の16被告』(日本放送出版協会)にも、教団内における恋愛事情が詳細に記されている。教祖の麻原彰晃が元教団幹部の石井久子を愛人にして3人の女児をもうけたことは有名だが、他の幹部も負けてはいなかった。例えば岡崎一明死刑囚は、当時、在家信徒であった飯田エリ子との肉体関係を法廷で認め、さらに教祖の麻原彰晃も飯田と肉体関係をもっていたこと、当時上祐史浩の恋人だった女性信者が別の男とセックスしていたこと、それが教団内で問題となったことなども明らかになっている。さらに事件発覚後も信者たちの恋愛模様は続き、逮捕後の井上死刑囚が飯田にラブレターを送ったことさえあったらしい。

 菊地被告についてもまた中川死刑囚だけではなく、他の信者らに恋愛感情を抱いていたことや肉体関係があったことも明らかになっている。さらに菊地被告は逃亡生活の中で高橋克也被告と行動をともにし、レイプまがいで関係を迫られ、男女の仲になったという報道もあった。

 だが、そんな中で井上死刑囚は女性に触れられることを「エネルギーが抜ける、カルマが交換される」と極度に嫌がり、今回の法廷でも“今でも童貞”と誇らしげに語っていたほど潔癖をつらぬいていた。つまり、菊地被告と中川被告の男女関係を法廷で暴露したのは井上死刑囚のそういった潔癖性の現れではないか、というのだ。

 いずれにしても、不邪淫の戒律のあるオウム教団でかくも多くの信者が性愛の問題に心奪われ、振り回されていたというのは、非常に興味深い。実は、こうしたことはカルト教団において、決して珍しい話ではない。

 カルトでは表面上、男女関係を厳しく制限させることが多いが、それはマインドコントロールや洗脳の一つの常套手段として使われる。性や食、睡眠、すべてにおいて飢餓状態を作り、その戒律を破ることで信者たちは良心の呵責に苛まれ、追い込まれ、洗脳され、さらに信仰を強めていくのだ。菊地被告も他の信者たちも“性”を巧みに利用・コントロールされてオウム真理教というカルト教団から抜け出せなくなっていた側面もあったのではないだろうか。

 菊地被告は東京地裁の有罪判決を受けて即日、控訴した。日本の裁判の状況を考えると、控訴審で判決が覆ることはほとんどないと思われるが、新たな証拠が提出される可能性もゼロではない。その推移を注意して見守りたい。
(高橋ユキ)

最終更新:2016.08.05 06:48

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