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NHKが開会式前日に放送『いだてん』が突きつける東京五輪への疑問!「いまの日本は世界に見せたい日本か」の台詞が甦る 

『いだてん』は、日本人初のオリンピック選手であるマラソン選手・金栗四三(中村勘九郎)と五輪招致に尽力した田畑政治(阿部サダヲ)を主人公に、1912年のストックホルム大会から1964年東京大会までの間、オリンピックに関わった人々を描いた群像劇だが、途中、1940年の幻の東京大会をめぐるエピソードが出てくる。

 1940年、東京での五輪開催が決まっていながら、日本の中国侵略に国際社会が反発。最終的に東京大会は開催されず幻に終わるのだが、37話で描かれているのは、その幻の東京オリンピック開催をめぐる嘉納治五郎(役所広司)と田畑(阿部サダヲ)の対立だ。

 日中戦争の勃発で国際世論の日本への批判が厳しくなるなか、日本人初のIOC委員であり五輪招致の中心を担った嘉納は国威発揚に五輪を利用しようとする政府を後ろ盾に、あくまで開催を押し切ろうとする。それに対して、土下座をしてまで開催返上を迫る田坂。

 しかし、嘉納は意見を変えず、田畑に対して、国際世論を抑え込むために、カイロで行われるIOC総会についてきてほしいと語る。

 すると、田畑はそれを拒否し、激高しながら、スポーツが政治利用されてしまう現状では日本にオリンピックは開く資格はなく、ここはまず返上して、日本は平和になってからまた招致すればいいと主張する。そして、逆に嘉納に対してこう問いかけるのだ。

「いまの日本は、あなたが世界に見せたい日本ですか?」

 結局、嘉納はひとりでカイロに向かい、ひとまず開催返上阻止に成功するが、その帰国途中、船上で客死する。一方、日本はさらに戦争にのめり込み、周知のとおり、1940年の東京五輪は開催されることなく、幻に終わる。

 それから20年。敗戦を経て、田畑らは再びオリンピック招致に動き、1964年に東京オリンピックが開催される。2019年12月に放送された最終話では、主に開会式から閉会式までの大会期間のドラマが描かれたが、印象的なのは閉会式のシーンだった。

 よく知られている通り、1964年の東京オリンピックの閉会式はそれまでの慣例を打ち破って、選手が自由気ままに入場するかたちになった。国籍、人種、性別、宗教、ありとあらゆる壁を乗り越え、選手たちが笑顔で手と手を取り合い入場するさまは、感動を呼び、以降、閉会式では、このかたちが定番となっている。

 最終話では、この閉会式の様子がたっぷり描かれたうえ、涙ぐむ田畑が映し出されるのだが、そこに亡き嘉納の幽霊が現れる。そして、田畑にこう問いかけるのだ。

「これが、君が世界に見せたい日本かね?」

 これに田畑が「はい」と微笑みながら胸を張って答える。あの幻の東京五輪への批判のことばが、今度はオリンピックの理念を具現化した閉会式への賞賛のことばとして、最終話によみがえるのだ。

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