電通をはじめとする広告代理店などが組織委から委託されている大会会場の運営業務を「中抜き」している問題は、これまでもしばしば指摘されてきた。
たとえば、予算規模がもっとも大きいオリンピックスタジアムでは運営業務の委託先に約35億円が支払われるというが、電通などの元請け業者は実際は何もやらず下請け会社に再委託するだけ。にもかかわらず、「管理費」という名目で10%を中抜きしている。つまり、業務は下請けに再委託するだけだというのに、3億5000万円あまりが広告代理店などに渡る計算だ。
だが、「管理費」という名のぼったくりは、大会会場の運営業務だけのものではなかった。この日の『報道特集』で証言をおこなった組織委元職員によると、会場とは別に設置される仮設施設や、大会で使用される物品などにも「管理費」が上乗せされている、というのだ。
「(物品購入にも)一般管理費がつくので、15%ぐらいが広告代理店の利益として見積書に出てくるものなんですけど。下請けの会社の方にコンタクトして『これっていくらぐらいなんですかね?』という話を訊くと、当然(下請けは)『言えません』と」
「(広告代理店が組織委に請求している金額を下請けに伝えたところ)『え、そんなにですか?』と言うようなことが多々ありますね」(組織委元職員)
つまり、1000万円の物品購入がおこなわれた場合、代金とは別になんと150万円もの金額が加算され、それが電通などの利益になっているというのだ。もはや滅茶苦茶としか言いようがないだろう。
さらに、会場運営費用に詳しい別の組織委元職員は、費用が膨らむ要因として、組織委から業務委託された電通などの広告代理店などが業務を下請けに再委託し、さらにその下請けも再々委託に出す構造があると証言。再委託によって中抜きが繰り返され、費用が膨れ上がる。つまり、東京五輪の大会経費が膨れ上がった大きな原因のひとつは、やはり電通による中抜きが問題となった「持続化給付金」の業務委託問題と同じ構造によるものだということだ。
IOCのトーマス・バッハ会長は「ぼったくり男爵」と呼ばれているが、ぼったくりを繰り広げているのは業務委託先の電通などや東京五輪の人材派遣を担うパソナグループも同じ。ようするに、本来は1円でも多く困窮する人に振り分けられるべきコロナ支援金の事務業務で焼け太りした挙げ句、東京五輪でもそうしたごく一部の利害関係者が丸儲けし、大会費用は膨れ上がってしまったのだ。そして、その赤字を埋めるために公金が支出されるのである。
東京五輪の開催によって命と安全が危険に晒されるだけではなく、公金の負担まで強いられる国民。こんな状況で「盛り上がれ」と言うほうがどうかしているだろう。
(編集部)
最終更新:2021.07.13 09:41