そして、その肩入れの背景にあるのは、やはりナベプロと政権との癒着関係なのではないかといわれている。ナベプロいえば、安倍首相の母・洋子氏と渡辺美佐名誉会長が旧知の仲で、古くから清和会との関係が深いことで知られ、近年も美佐名誉会長が産業遺産国民会議の評議員を務めていたり、渡辺ミキ社長が所属タレントたちを引き連れて「桜を見る会」に参加するなど安倍政権と近かったことで知られている。
さらに看板タレントのひとり恵俊彰がMCを務める『ひるおび』は、安倍政権・菅政権通じて応援団番組の筆頭で、とくに恵は菅首相と近く、官房長官時代に会食をしていたという話もある。
いまさら説明するまでもないが、菅首相は政権浮揚のために、五輪開催を何としても強行しようとしている。そんななか、ワイドショーの司会者として大きな影響力をもつ恵が聖火ランナーを辞退したら、五輪中止派が勢いづき、自分たちが応援する菅首相に敵対することになりかねない、と判断したのではないか。
そして、イモトの辞退を鳥取県のせいにしようとしたのも同様だろう。4月22日、イモトが緊急事態宣言が出ていない鳥取県の聖火ランナーをイモト側からの申し出で辞退したことを明かされてしまったため、ナベプロ幹部は政権ににらまれることを嫌がったのはもちろん、どうしても強行せねばならない1週間後の恵の聖火ランナーにも影響を与えかねないと考えたのではないか。
平井知事は、芸能人ランナーをめぐるトラブルを明かした上で、聖火リレーについて、「我々が招いたわけではないコマーシャリズムが色濃くあるかもしれませんが、それは、また見ていただいて今後のオリンピックを考えるきっかけに」と語っていたが、オリンピック強行の裏側には、コマーシャリズムだけではなく、今回垣間見えた政治権力との癒着などの問題もある。そして、そのために、国民の健康を平気で危険に晒そうとする横暴。まさにグロテスクというしかない。
(編集部)
最終更新:2021.05.26 11:30