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『報ステ』女性蔑視CMは偶然じゃない! チーフPセクハラ事件が象徴する体質、個人視聴率導入で進む勘違いの若返りと批判精神の低下

 このPR動画は若い層、とりわけ若い女性に『報ステ』をアピールするためにつくられたことは明白だが、若い女性の貧困や自殺が社会問題化するなか、報道番組としてその層にアプローチする方法はいくらでもある。にもかかわらず、若い女性を完全に見下して、挙げ句、女性の口から「ジェンダー平等のスローガンは時代遅れ」と言わせたのである。

 このように、今回のPR動画は、ジェンダー平等を求める運動に対して「女性の活躍は進んでいる。もう女性差別はない」などと否定するバックラッシュのひとつであることはあきらかだ。社会学者の菊地夏野・名古屋市立大学准教授の著書『日本のポストフェミニズム 「女子力」とネオリベラリズム』(大月書店)では、政府のジェンダー政策が「性差別の是正」ではなく「男女共同参画」であるように法律や政策において性差別の存在を必ずしも認めていないことに言及し、マスメディアが「女性の活躍」をもって「差別はほとんど解消された」というイメージを後押ししていると指摘されているが、今回の『報ステ』動画は露骨に性差別の実態を無視して反動を煽ることで是正を求める声を潰そうとするものであり、報道番組のPRとして相当に悪質なものと言わざるを得ない。

 そもそも、『報ステ』をめぐっては、2019年にチーフプロデューサーだった桐永洋氏の女性アナウンサーやスタッフへのセクハラが問題になり、チーフプロデューサーから異動となるという事態も起こっている。しかも、このとき女性スタッフから大量のセクハラ被害の訴えがコンプライアンス室に持ち込まれていたにもかかわらず、テレ朝の上層部は1カ月以上も放置し、さらには「酔っ払った女性アナウンサーが最初に誘った」「今回のセクハラ告発の裏には『報ステ』の派閥抗争がある」「桐永の路線に反発する『報ステ』旧勢力がセクハラ疑惑を仕掛けた」などという女性たちを攻撃するカウンター情報をメディアにリークしているフシさえあった(詳しくは既報参照)。今回の動画を「PRになる」と考えるような感覚のありえなさは、こうした体質を如実に反映しているとも言えるだろう。

 しかも、PR動画が大炎上したことを受けて『報ステ』側は動画を削除、公式SNSにお詫びを掲載したのだが、そこでも〈不快な思いをされた方がいらしたことを重く受け止め〉などと記述。性差別の問題を矮小化させたことや若い女性を見下す内容が問題だと指摘されたのに、「不快な思いをされた方」とここでも“感じ方”の問題に矮小化させたのだ。

 また、このお詫びで『報ステ』側は、〈ジェンダーの問題については、世界的に見ても立ち遅れが指摘される中、議論を超えて実践していく時代にあるという考えをお伝えしようとした〉と釈明。実践がどのような段階にあっても議論は常にしつづける必要があると思うが、やはり『報ステ』は「議論やスローガンはもう必要ない」と言いたかったというのだ。これ、森喜朗元首相の「女は話が長い」とか、党の夫婦別姓議論から女性議員を排除し「ニュートラル」と胸を張った下村博文・自民党政調会長と、言っていることは同じではないか。

 この国のジェンダー平等の遅れが世界的に問題視されているさなかにこのような動画を公開し、問題を指摘されても何が問題となっているのか理解しているとは思えない「お詫び」を出してしまう、この絶望的なまでの対応──。これはPR動画の問題にとどまらない、まさしく『報ステ』という番組のこの間の劣化を象徴するものといえるだろう。

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