同記事によれば、マイクロソフトのMSNは、2004年4月5日から毎日新聞社と共同で運営してきた「MSN毎日インタラクティブ」を2007年9月末に終了。前述のように、直後に産経新聞との「MSN産経ニュース」に鞍替えすることになったわけだが、その経緯について笹本氏はこのように語っている。
〈2004年4月5日からスタートして、約3年半共に歩んできた毎日新聞とたもとを分けた理由について、マイクロソフトの執行役オンラインサービス事業部事業部長である笹本裕氏は、「毎日新聞社がフォーカスしたかったのは紙媒体で、我々とは進む方向性が異なった」と説明する。そこで、マイクロソフトのほうから産経グループにアプローチしていった。産経を選んだのは、「新聞社の中では比較的ネットに力点をおいていたし、いろいろな新しい試みにチャレンジする社風もあったので非常に相性がよかった」(笹本氏)と言う。〉(CNET Japan)
また別の記事でも、産経との提携について「我々から持ちかけた」と笹本氏は語っている(「マイナビニュース」2007年9月25日)。
つまり、マイクロソフト側から産経新聞に売り込んで、結果、ネトウヨ製造メディアである「MSN産経ニュース」は始まったのだ。そして、この責任者的な立場にあったのが、現Twitter Japan代表取締役である笹本氏だったというわけである。
さらに笹本氏は先日、「文春オンライン」のインタビュー(「「なぜツイッターは青年会議所(JC)とパートナー協定を結んだの?」社長の本心とは」5月10日)に応じて、JCとのパートナーシップ締結騒動を釈明しているのだが、そのなかで、Twitter上のヘイトスピーチ問題についてこのように語っていた。
〈この件だけではなく、ヘイトスピーチなどに関しても「何が正しくて、何が正しくないのか」「どこに線引きをすべきなのか」ということについては「解がない」と思っています。そのような「解がない」ことに関して議論に加わることは控えたいのです。
ぼくにはぼくの意見があるし、他の人には他の人の意見がある。それがまさにツイッターの世界です。そこにぼく個人としては加わりたくない。
それは「ツイッター社の笹本だから」というよりは、個人的な思いからです。「どっちの言い分もあるよね」というのが、強いていうとぼくの言い分です。「人によって見方は違うし、なぜお互いにもっと冷静に向き合えないのかな」というのが正直な気持ち。しかし、それを言うとおそらく「無責任だ」と言われるでしょう。
でも、世の中の会話すべてに誰かが責任を持っているのでしょうか?〉
マイノリティへの差別を助長し、ときに虐殺まで煽動するヘイトスピーチ(ヘイトクライム)に対して「どっちの言い分もあるよね」は通らない。まして、笹本氏は同インタビューで〈よく批判を向けられるのですが、ツイッター社がどちらかに寄っているということはまったくありません。ツイッターはあくまでも、いろいろな意見が交わされるプラットフォームで、意見を交わすことは皆さんの自由です。その自由をぼくらが剥奪するということは、本末転倒なのではないかと思うのです〉とも語っているが、だとしたら、反差別を広めているアカウントを突然「凍結」するというのは、まったく意味がわからないだろう。
いずれにしても、米国のTwitter本社など、いま、ウェブのプラットフォームと呼ぶべき世界的企業が明確かつ迅速に反差別のメッセージを発信していることは、情報・言論のインフラとしての社会的責任の大きさを示したと同時に、あらためて、日本におけるTwitter Japanの問題を改めて浮き彫りにしたと言える。あらゆるレイシズムに抗う方法として、SNS上で反差別を訴え続けることは当然だが、わたしたちは、その媒体企業がどのような姿勢であるかについても注視する必要があるだろう。
(編集部)
最終更新:2020.06.04 02:27