しかし、である。信じがたいのは、マスコミの姿勢だ。こんな重大な不正疑惑が浮上したにも関わらず、テレビや新聞などは一切報道せず、まるで何もなかったかのように無視を決め込んでしまった。
その理由はもちろん、松浦氏が、芸能・エンタメ界の実力者であり、そのバックにバーニングプロなど、大物がついているからだ。
「テレビもスポーツ紙も松浦氏や周辺の芸能人脈と完全に癒着して、利権のおこぼれにあずかっている。だから、松浦氏にどんなスキャンダルが浮上しても、絶対に報道できない。仮に松浦氏に国税が調査に入っても、おそらくワイドショーはまったく報道しないでしょう」(ワイドショースタッフ)
なかでもひどいのが、テレビ朝日だ。何しろ、テレ朝はこんなスキャンダルが噴出している状況で、例の、松浦氏と浜崎あゆみをモデルにしたドラマ『M 愛すべき人がいて』を放送し続けているのだ。
周知のように、『M 愛すべき人がいて』の原作は、幻冬舎から出版されているノンフィクションライター・小松成美氏の“事実に基づいた小説”。浜崎あゆみと松浦氏に取材した「事実に基づいている」ことが売りだが、その中身は浜崎と、彼女を見初めてスターダムに押し上げた松浦氏のラブストーリー。しかも、別れた後も、浜崎の心のなかにはいつも松浦氏の存在があり、その曲の多くは松浦氏との恋愛を歌ったものだった……という調子で、やたら、松浦氏が美化されている。
「出版当初は、“落ち目の浜崎が復活のために仕掛けた暴露本”などと浜崎に批判が浴びせられましたが、的外れもいいところ。あれは、松浦氏が見城氏といっしょにしかけた自分のPR本ですよ。ここのところ、松浦氏は自己顕示欲を前面に出しているところがあって。同時期に、幻冬舎からビジネスエッセイ『破壊者 ハカイモノ』も出版していましたしね。ただ、松浦氏単独の本では売れないので、浜崎を利用してセットで売り出そうとしたのでは」(出版関係者)
しかも、問題は、この『M 愛すべき人がいて』が出版後すぐ、テレビ朝日でのドラマ化が発表されたことだ。周知のように、テレ朝では幻冬舎の見城社長が同局の番組をチェックする放送番組審議会の委員長を務め、『M 愛すべき人がいて』の著者である小松氏も同審議会の委員に名を連ねている。
「安倍首相に近い見城氏が放送審議会で、テレビ朝日の政権批判報道に圧力をかけてきたことはよく知られていますが、もうひとつ、局内でいわれてきたのが、幻冬舎の本のプロモーションをしなければならないという忖度がはびこっていること。実際、テレ朝では、情報番組で幻冬舎の本がやたら取り上げられたり、幻冬舎本の著者が番組に出演している。今回もおそらくその延長線上に出てきたものでしょう」(テレビ朝日関係者)
しかし、番組をチェックする立場の審議会の委員長が社長をつとめる出版社が出した、審議会の委員が書いた本をドラマ化するって、テレ朝は公共の電波を私物化しているということではないのか。しかも、そのドラマのモデルになっているのが、“相続税逃れの偽装離婚”という重大な不正疑惑が浮上している人物なのだ。こんなドラマを放映することがなぜ許されるのか。
問題はテレビ朝日だけではない。スポーツ紙も松浦氏の疑惑にはまったくふれることなく、そのトンデモな内容をヨイショする報道を展開している。
弱い立場のタレントは些細なスキャンダルで袋叩きにする一方で、芸能界の実力者やそれと関係のある人間は、税金逃れをしようがセクハラをしようが、そのまま出演させ、番組を続けさせる。今回の問題はまさに、日本のメディアの現実を再確認することになったといえるだろう。
(編集部)
最終更新:2020.05.24 03:14