首相官邸HPより
「人と人との絆の力があれば、目に見えないウイルスへの恐怖や不安な気持ちに必ずや打ち勝つことができる。私はそう信じています」「みんなで前を向いて頑張れば、きっと現在の困難も乗り越えることができる」──。本日、緊急事態宣言を5月31日まで延長すると決定したことを受けておこなった記者会見で、安倍首相はこの期に及んでもまるで実感が感じられない空疎なポエムを読み上げた。一方、どのような基準・判断で緊急事態宣言を解除するのか、納得のいく根拠はまったく示されなかった。
そもそも今回の延長期限自体、「キリがいい」という理由で今月末までに決まったと報じられているが、いまだPCR検査数が増えていない状況で、一体どうやって判断するというのか。率先しておこなうべき検査・医療提供体制の強化という自分たちの仕事もやらないまま、国民にだけ痛みを押し付けようというのである。
しかも、きょうの会見では、安倍首相が苦境に立たされている国民の存在を気にもかけていないということを証明する、信じがたい“事件”が起こった。
安倍首相は期間延長によって休業を続けなくてはならない事業者の存在について、「苦しみは痛いほどわかっています」などと言いながら、手薄すぎる現行の給付金や融資制度を並べて説明しただけ。挙げ句、中小・個人事業主向けの「持続化給付金」の支給について、こんなことを言い出したのだ。
「5月1日から最大200万円の持続化給付金の受付を始めましたが、もっとも早い方で8月から入金を開始します」
あれだけ急ぐと言ってきた給付金が、「早い方で8月」……!? この発言にTwitter上ではツッコミが相次いだが、その後、記者の質疑応答中に安倍首相は「5月8日」の言い間違えだったとして訂正した。
プロンプターを読み上げるだけの簡単な仕事さえできないのかと呆れもするが、これはたんなる間違いだと看過できない。休業要請によって収入がゼロになり、家賃などの固定費の支払いのみならず、きょう食べるものにも困窮し明日の生活さえ見通しがたたない人びとにとって、この給付金は命綱だ。だからこそ一刻も早く給付されなければならないのに、その切迫感がないから安倍首相は「8月」と間違った数字を読み上げたことに気づかず、すぐに訂正することができなかったのではないか。ようするに、休業要請によって国民が強いられている現状を、まったくわかっていない、わかろうとしていない証拠だ。
そして、さらなる期限延長にともなって最大の問題は追加の補償策についてだが、痛みを押し付けてばかりで国民の生活を何も理解しようとしない安倍首相は、何一つ打ち出すことはなかった。
期限を延長する以上、現在の一律10万円給付や事業者への最大200万円の給付金では足りないことは言うまでもない。しかし、安倍首相は「事態の推移等状況等を十分に見極めながら判断をしたい」と言うだけ。先週成立した補正予算は収束後の「Go To キャンペーン」に約1兆7000億円も計上する有様で、新型コロナ対策としてあまりに不十分だと批判があがっており、普通ならゴールデンウィークを返上して第二次補正予算について詰めるべき局面だが、それもせず、こう述べたのだ。
「飲食店などのみなさんの家賃負担の軽減、雇用調整助成金のさらなる拡充、厳しい状況にあるアルバイト学生への支援についても、与党における検討を踏まえ、速やかに追加的な対策を講じていきます」