首相官邸HPより
安倍政権は本気で国民を殺しにかかっている──。いまだ収束の目処がたたず、経済にも大きな影響を及ぼしている新型コロナの感染拡大だが、安倍首相が進めている追加経済対策では、一律の現金給付を見送る方向で調整に入ったと報じられたからだ。
なかでも、昨日24日の読売新聞朝刊は複数の政府関係者があきらかにしたとする具体的な対策案を報道。それは驚愕の内容だった。
〈焦点の家計支援策は「商品券」方式とし、現金の一律給付は見送る方向だ。〉
〈与党内では現金給付への待望論も残るが、政府は貯蓄に回る可能性が高いとして否定的で、一律での給付は実施しない方向で調整している。〉
〈与野党内の一部には消費税率の引き下げを求める声があったが、「商品券に比べて即効性がない」(政府関係者)などとして、政府は検討しない方針だ。〉
そして重要なのは、家計支援策の肝だという「商品券」だ。
〈家計支援策では、外食や観光に使途を限定した期限付きの商品券やクーポン券などを配布して消費を下支えする。額面を大きくする代わりに、配布対象を生活困窮者らに限定することも検討している。〉
つまり、政府は生活困窮者に対して、米も野菜も買えなければ家賃の支払いもできない外食・観光に限定した「商品券」を配る、というのである。
これは正気の沙汰ではない。すでに新型コロナの影響で仕事を失った人や給料が減った人が出てきており、きょうの生活がどうなるのかも見通せないような死活問題になっている人もいる。いま緊急に必要なのは、貧困世帯に対する家賃や水道光熱費を国が肩代わりするような生活補償だ。百歩譲って「商品券」を配るというのなら、生活する上で欠かすことのできない食料や医薬品などが幅広く購入できるものでなければならない。
しかし、安倍政権はこの期に及んで、「もっと外食や旅行に行けよ」と迫るつもりだというのだ。当の政府が不要不急の外出を控えるよう呼びかけているのに、である。
その上、この「商品券」の配布を、安倍政権は「生活支援」ではなく「景気対策」と考えているらしい。現に、麻生太郎財務相は昨日、一律の現金給付を否定するなかで「商品券とかいうものは貯金には(お金が)あまりいかないんだよね」と発言。生活が困窮していれば貯金に回す余裕などないのに、まさか“貯金させないための商品券だ”とは……。生活困窮者の命をどう守るかということは、まったく無視しているのである。
そもそも「商品券」を配ることを「景気対策」だと考えること自体、どうかしている。事実、バブル崩壊後の1999年にも政府は2万円分の「地域振興券」を配布したが、消費刺激効果は極めて小さかった。その上、今回は使途を外食や観光に限るというのだから、景気回復に効果を発揮するとは到底考えられない。
さらに、貧困世帯にとっては待ったなしの現金給付は、所得制限を設ける予定だと伝えられているが、その金額はまだ定かではなく、〈事務手続きに時間がかかる可能性〉(共同通信24日付)があるという。実際、西村康稔経済再生担当相は23日、「早くても5月末になる」と述べていた。
「緊急」の経済対策だというのに、感染拡大をつづけている最中に外出や旅行を促す「商品券」を配る一方で、肝心の現金給付も金額はいまだ打ち出されず、さらには「早くても5月末」……。はっきり言って、やっていることがめちゃくちゃではないか。