実際、『報ステ』の人事問題を取り上げた「週刊文春」(文藝春秋)1月2日/9日号では、早河会長が周囲に漏らしているというこんな言葉を報じている。
「古舘(伊知郎)時代からの問題児がたくさんいるからなあ」
今回、契約打ち切りを言い渡されたベテランたちは、臆さず政権批判をつづけてきたスタッフだ。実際、2015年にコメンテーターを務めていた古賀茂明氏の「I am not ABE」発言によって官邸から直接抗議を受け、その後、番組統括の女性チーフプロデューサーが更迭されたことをはじめ、古舘の降板後も前述したように『報ステ』はさまざまな圧力に晒されてきた。だが、そんななかでも、政権への批判が消えてしまうという状況には陥らなかった。現に、取り上げる回数は減ったとはいえ、いまも国会での安倍首相の無責任答弁など、政権批判につながる話題をまったく伝えていないというわけではない。ようするに、上層部の厳しい締め付けのなかでも伝えるべきことは伝えなければいけないと現場で奮闘しているスタッフは少なからずいる、ということだ。
だが、そうして長年に渡って番組の支柱を担ってきたベテランの社外スタッフたちを、ついに契約打ち切りにしてしまおうというのだ。しかも、これによって「政権に批判的な取り上げ方をすると、自分も契約打ち切りにあうかもしれない」という萎縮が広がることを上層部は目論んでいるのだろう。
また、これだけでは飽き足らず、早河会長はさらに政権批判を抑え込むため、今年7月の定期異動でもスタッフを入れ替えるつもりだといい、「報ステのカラーを事なかれ路線に塗り替える意向」なのだという(前出「週刊文春」より)。
しかも、こうした早河会長の方針は、すでに安倍官邸にも伝わっているふしもある。というのも、世耕氏のクレーム問題が起こったばかりだったというのに、今年、安倍首相がテレビの新年を迎えての単独インタビューに応じたのは、テレ朝をキー局とするニュース系列・ANNだったからだ。
報道機関のトップが時の総理大臣と会食をおこなうなど深い関係が取り沙汰されること自体があるまじきことだが、その上、政権の顔色伺いのために歴史ある報道番組を潰し、それを支えてきたスタッフを派遣切りしようとしている現実は、さまざまな意味で重大な問題をはらんでいる。今回の契約打ち切り問題に対して、契約終了通知の撤回を求めているメディア関連労組「日本マスコミ文化情報労組会議」が13日に緊急院内集会を衆院第一議員会館でおこなう予定だが、本サイトでは今後もこの問題についてお伝えしていくつもりだ。
(編集部)
最終更新:2020.02.11 08:49