首相官邸ホームページより
昨日、韓国政府が破棄中止を発表し、日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)が延長された。23日0時の失効を控えるなか、韓国側が「日本政府の輸出規制に対するWTO提訴の中断」、日本側が「日韓担当省庁の課長級・局長級会合の再開」を“条件”として延長に合意した。ひとまず最悪の事態を避けられたことは率直に評価したい。
ところが、右派メディアやネトウヨたちは早速「韓国が屈服!」「安倍政権の完全勝利」なる愚かな勝どきをあげている。
もちろん、これは安倍政権の政治家たちが「日本政府は一切譲歩していない」「完全勝利した」などと言い張っているからだ。
たとえば安倍首相は、昨日18時30分ごろのぶら下がり会見で「北朝鮮の対応のために日韓、日米間の連携は重要」「今回、韓国もそうした戦略的観点から判断したのだろうと思う」と述べるにとどめ、日本側は一切姿勢を変えていないかのようにふるまった。しかも、TBSが報じたように、メディアには「安倍総理は『一切妥協していない』と語っている」という情報が流されている。
これに呼応するように、梶山弘志経産相も「適正な輸出管理をしていくことは変わらない」、茂木敏充外相も「輸出管理とGSOMIAは別問題」と強弁している。閣僚以外はもっと露骨で、「ヒゲ」こと佐藤正久・前外務副大臣はTwitterに〈日本は譲っていないし、条件付き合意ではない。情勢の判断を誤り、振り上げた拳をギリギリになり、米の圧力等を受けてベタ降りした感じ〉と投稿し、三原じゅん子参院議員は速報記事をリツイートして〈あらあら…随分強気だったのにね〉と吐き捨てた。
また、産経新聞によると、日本の政府高官は「パーフェクトゲームだった」などと嘯いているらしい。
しかし、これは大本営発表もいいところだろう。そもそも、今回、破棄を通告していた韓国側が、“条件つき延長”に応じたのは、安倍政権の外交勝利でもなんでもなく、米国からの圧力があったからに過ぎない。
しかも、その圧力は日本側にも加えられており、その結果、韓国側はWTO提訴プロセスの一時停止、日本側は輸出規制問題での協議再開という形で、お互い国内向けのメンツを保ったまま、日韓両政府が半歩ずつ歩み寄ったのである。
いや、それどころか、表に出ていないだけで、「日本が将来的に輸出規制を解除する」という方向である程度、話が付いているのではないか、ともささやかれている。
「韓国が折れたというのはかなり一面的。文大統領の立場から見れば、国内でスキャンダルを抱える逆風のなか、韓国国民の大半が破棄すべきという意見で、しかも、来春には総選挙を控えています。GSOMIAの延長は、政治生命的にはリスクでしかない。それでも今回、日本側との“条件つき合意”に踏み切ったのは、日本が輸出規制問題の解除についてなんらかの目処を指し示したとしか考えられません」(全国紙政治部記者)
実際、フジサンケイグループのフジテレビ国際取材部長ですら、破棄中止について、米国が10月末くらいから日韓双方に働きかけをしており、具体的仲裁案も提示するなどかなり強い介入があったという見方を示している。
「ようするに、日韓両国に米国から相当な圧力がかかり、お互い譲歩を強いられたということです。ただ、それを公にすると、今度は安倍政権も右派からの支持を失いかねない。それで時間をおいて、ということになったんじゃないでしょうか」(前出・全国紙政治記者)
ところが今回、冒頭で述べたように、安倍政権は「日本の全面勝利」とでもいうような話をマスコミにしきりに流している。いや、その相手はマスコミだけではないだろう。