ところが、テレビ朝日では、安倍首相と癒着している早河洋・テレビ朝日会長ら上層部による、報道番組への圧力が強化され、『報道ステーション』でも政権批判をさせないような大幅な組織変更が強行された。それは、古舘伊知郎が降板する前からすでに始まっていたが、とくに顕著になったのは去年の7月、早河会長の子飼いである桐永洋チーフロデューサーが就任してからだ。
桐永体制の『報ステ』は政権批判や安倍政治の問題点の追及をほとんどやらなくなり、去年10月の改編で、『報ステ』早河会長のお気に入りの徳永有美アナをキャスターに抜擢、物言うアナウンサーだった小川アナを同番組から追い出してしまったのだ。
しかも、『報ステ』を辞めさせられた小川アナの異動先は、ネトウヨ論客も多数出演する『Abema Prime』という、嫌がらせのような人事だった。小川アナが支持を集めたのはジャーナリスティックでリベラルなスタンスだったにもかかわらず、テレ朝は番組でコスプレをさせたり、露出多めの衣装でドラマに出演させたり、とセクハラまがいのことも行っていた。
こうした扱いを受けた小川アナが、テレビ朝日を辞めたいと考え始めたのは当然だろう。そして、TBSがその情報をキャッチし、『NEWS23』のキャスターをオファーしたというわけだ。
「TBSはテレ朝時代から人気のある小川アナの起用で、『NEWS23』の視聴率をなんとかしたいという思惑があるのはもちろんですが、リベラルなスタンスやジャーナリストとしての資質についても高く評価している。報道局も、小川アナなら、『NEWS23』 のこれまでの路線を引き継いでくれる、と諸手を挙げて賛成したようです」(TBS関係者)
5月29日に行われたTBS幹部の定例会見でも、そのことは見て取れた。小川アナについて聞かれた際、TBS佐々木卓社長は「小川さんはジャーナリストとして、しっかりしている。『NEWS23』の顔になっていただいて、夜のニュースゾーンを引っ張っていただくのに、ふさわしい方だなというふうに思っています」。本田史弘報道局長も「ジャーナリズムへの確かな視点を持っている方。時代の共感者として確かな伝え手として幅広い層から支持されている方です。ニュースを人ごとでなく、自分のものとして感じ取って伝えるという力に長けた方と思っています」とジャーナリズムの部分を強調したのだ。