しかも、大坂選手の記者会見の全体をあらためて確認してみると、大坂選手はホワイトウォッシュCMについて、時事通信や朝日新聞が報じたように「あまり気にしていない」「なぜ騒ぐ?」などと発言をしていたわけではなかった。
どういうことか。報道と実際の会見内容を比較してみよう。まず、報道の方だが、時事通信では、冒頭で紹介した〈大坂なおみ選手「気にしていない」=アニメ広告、肌の色批判で〉の見出しの後、こんな本文を配信している。
〈大坂なおみ選手は24日、日清食品のアニメ広告で同選手のキャラクターの肌の色が実際より白く描かれ批判が起きた問題について「正直に言うと、あまり気にしていない。なぜ騒いでいるのか分からない」と述べた。〉
また、朝日新聞は「大坂なおみ、アニメ動画批判「なぜ騒ぐ?」逆質問も」〉のタイトルで、以下のように書いた。
〈準決勝後の会見で、スポンサーの日清食品グループが、自身を起用したアニメ動画広告の肌の色を実際より白く描いたことについて批判を受け、動画を削除したことについて、海外メディアから見解を問われた。初めて質問を受けたといい、「たくさんの日本人記者がここにいるから聞いてみたら?」と逆に質問。「なぜ多くの人が騒いでいるのか分からない。この件についてはあまり関心が無いし、悪く言いたくない」と話した。〉
しかし、実際の会見の日清ホワイトウォッシュ問題をめぐるやり取りは以下のようなものだった。
大坂選手は、まず、海外の男性記者から“ホワイトウォッシュについて意見がありますか?”などと訊かれて、「私は今このことに集中しています。決勝まで勝ち上がってきて、それが私のメインプライオリティです」(I'm just focused on this right now. I've gotten to the final of a slam, and that's sort of my main priority)と最初は回答を避けた。しかし記者から「社会に意識をもつひとりの人間として」と重ねて問われ、日清と話し合いをし謝罪を受けたと明かしたうえで、「明らかに私の肌は褐色です。明らかですよね。日清がホワイトウォッシュとかそうしたもの(whitewashing or anything)を意図したとは思っていませんが、次に彼らが私や何かを描こうとするときは、私にそれについて話すべきだと思います」と答えた。
「意図したとは思ってませんが」というのは、ビッグスポンサーへの配慮も感じさせるが、一方で「私の肌は褐色である」とイラストの肌の色が誤っていたことを明確にし、再発防止のため今後は自身との事前の話し合いを求めたことを明かしており、アニメが不適切だったという認識は一切否定していない。