上沼が2人に審査員のなかでも突出して厳しい採点をしたのだろうか。いや、そうではない。実際、採点を検証してみると、上沼がスーパーマラドーナに特別厳しい点数を付けていたわけではないことがわかる。
上沼がスーパーマラドーナにつけた点数は89点だが、3位のジャルジャルには88点、6位のトム・ブラウンには86点、8位のギャロップにはスーパーマラドーナと同じ89点、9位の見取り図には88点、10位のゆにばーすには84点と、他のコンビの点数と比較すると極端に低い点数をつけたとは言えない。
また、他の審査委員と比較しても、スーパーマラドーナに対する上沼の審査が突出して低いわけではなく、中間ぐらいだ。実際、立川志らくは88点、オール巨人は87点、松本は85点と、上沼より低い点数をつけている審査委員は3人もいた。
「1点で人生が変わる」と言うなら、真っ先に批判されるのは、いちばん低い点数をつけた松本のはず。ところが2人は、上沼には「オバハン」「更年期障害」という言葉まで使って攻撃したにもかかわらず、松本には一切文句を言っていない。
ちなみに、中川礼二は90点をつけているが、これは彼がつけた点数のなかではトム・ブラウンと同じく一番低い数字。他の芸人のスコアと比較して見ると、スーパーマラドーナを最下位においたのは中川礼二だけであり、点数だけで単純に見れば、スーパーマラドーナを一番評価しなかったのは中川礼二ということになる。
また、審査員のなかで一番炎上していたのは、立川志らくであった。『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)放送中からツイッター上では視聴者から立川志らくの審査への疑問を投げかける文言が大量に投稿されていたが、2人が怒りの矛先を向けたのは立川志らくではない。
審査結果だけを見れば、上沼だけを批判する合理的理由などない。久保田は「自分の感情だけで審査せんといてください」と言っていたが、根拠なく攻撃しているのは自分たちのほうではないか。
こんなふうに言うと、「オールドスタイルを基準にしている」とか、「現役で漫才をやっていない」とか、「コメントがキツい」とか、「権力を笠に着ている」とか違う理由をいろいろ持ち出してくるだろうが、「じゃあ、巨人は?」「じゃあ、松本は?」「じゃあ、志らくは?」という話でしかない。