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Wikiコピペ疑惑の百田尚樹『日本国紀』を真面目に検証してみた! 本質は安倍改憲を後押しするプロパガンダ本だ

 まず、【起】は近年の出版ムーブメントのひとつである“日本スゴい!言説”の亜種である。たとえば『日本国紀』の冒頭(「序にかえて」)は〈日本ほど素晴らしい歴史を持っている国はありません〉との一文から始まる。古代、中世、近世、近代にいたるまで、このような日本および日本人を絶賛するトーンは随所にみられる。いくつか引用しておこう。

〈我が国、日本は神話の中の天孫の子孫が万世一系で二十一世紀の現代まで続いているとされている。こんな国は世界のどこにもない。〉
〈「太陽が昇る国」──これほど美しく堂々とした国名があろうか。しかもその名を千三百年も大切に使い続けてきた。それが私たちの国なのである。〉
〈〔引用者注:律令時代の身分制度について〕これらを見ると、日本の身分制度は諸外国と比べて、厳格なものでないのがわかる。中国やヨーロッパ社会における奴隷制度に相当するものは、日本には存在しなかったといえる。〉
〈私は、日本人は世界のどの国の国民にも劣らない優秀な国民だと思っている。これまで述べてきたように、文化、モラル、芸術、政治と、どの分野でもきわめて高いレベルの民族であり国家であると確信している。しかし、幕末における幕閣の政治レベルと国際感覚の低さだけは、悔しいながらも認めざるをえない。〉

 続いて【承】の「侵略戦争・戦争犯罪の否認と矮小化」だが、これは明治から第二次世界大戦までの記述に顕著である。ここからは、日本の帝国主義と侵略、戦争犯罪を否定ないしは美化し、同時に「敵国」の残虐行為を強調することで相対化する狙いが読み取れよう。

 たとえば、日清戦争については〈日本が清と戦った一番大きな理由は、朝鮮を独立させるためだったのだ。朝鮮が清の属国である限り、近代化は難しかったからである〉と記し、韓国併合については〈日本は大韓帝国を近代化によって独り立ちさせようとし、そうなった暁には保護を解くつもりでいた〉〈韓国併合は武力を用いて行われたものでもなければ、大韓帝国政府の意向を無視して強引に行われたものでもない〉などとする。まるで日本が「善意」によって清の支配から「解放」し、朝鮮半島を「近代化」させてあげたかのような書きぶりだが、朝鮮での大きな抵抗運動が示すように、日本が不平等条約と併合を強要し植民地化したのが史実だ。

 日本の中国侵略に関しても、いわゆる対華二十一カ条要求について〈一部の希望条件を除き、当時の国際情勢において、ごく普通の要求だった〉などと評価しているが、実際には要求を飲ませるために軍事圧力に出ながら最後通牒を行っている。また、張作霖爆殺事件については〈事件の首謀者は関東軍参謀といわれているが、これには諸説あって決定的な証拠は今もってない〉と書き、含みをもたせている。しかし、歴史学的には河本大作が首謀者であると定説が固まっており、極右界隈ががなり立てる「ソ連工作員犯行説」は陰謀論として否定されている。

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