こういった風刺はライブパフォーマンスにも見られた。2013年に行われたコンサートツアーでは、「ピースとハイライト」演奏時、モニターに、世界各国のデモの様子を映した写真を流したり、安倍首相・朴槿恵大統領(当時)、習近平国家主席、オバマ大統領(当時)が肩を組んで歌っているアニメを流しており、ファンの間では話題となっていた。
そしてこれが本格的に炎上したのは、2014年のNHK紅白歌合戦で「ピースとハイライト」を歌ったときのこと。
横浜アリーナで行われている年越しライブの会場からの中継で登場したサザンだったが、その際、桑田はチョビ髭をつけて登場。その年に閣議決定された集団的自衛権の行使容認を批判していると受け取れる歌詞もあいまって、ネトウヨの怒りに火をつけたのだ。
この後、桑田は公式ホームページや自身のラジオ番組などを通して、複数回にわたって謝罪するという事態に追い込まれた。
「ピースとハイライト」をめぐる一連の出来事のなかでサザンが表現してきたことはなにも間違っていないし、謝罪などまったく必要なかった。逆に、ここで謝罪をしてしまったことは「音楽に政治をもち込むな」という風潮を強化し、また、ほかのミュージシャンの萎縮を招いてしまうことでもあり、完全な悪手であったと思うが、しかし、これによって社会風刺を封印しようという考えにいたることがなかったのは高く評価できることでもある。桑田は前掲「文藝春秋」のなかでこのようにも語っている。
「歌を通してうまく風刺できたらいい。大衆とともにあるポップスというものは、本来それくらい突っ込んだ表現をしなければつまらないものだし、きつい風刺をさらりとできるくらい、常に自由でなくちゃいけません」
サザンはこれからの音楽を通して是非とも社会風刺、問題提起をしていってもらいたい。サザンのようなベテランの大物バンドがそのような動きをすることは、中堅・若手のミュージシャンにも少なくない影響を与えるし、そうなることで、政治や社会に関する発言を行ったり、そういう曲を歌うことが「なんかちょっと変わってるね」「そういうの、あんまり面白くないからさ」と言われてしまう風潮は確実に変化していくだろう。
(編集部)
最終更新:2018.10.05 12:39