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ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第21号 

不当解雇しながら解決金を払わないブラック企業の姑息手口! 安倍政権「解雇の金銭解決制度」の真の狙いは

 問答無用で解雇しておきながら、労働者が覚悟を決めて戦いを挑んできた途端、あっさり解雇を撤回する。最近、こんなブラック企業が増えている。

「解雇が撤回されて職場に戻ることができるんだから不戦勝みたいなもんじゃないか。それのどこが問題なのか?」と思ったあなたは甘い!

 このような場合、会社が不当解雇であったことを反省し、労働環境を整えて解雇した労働者を受け入れるというハッピーエンドであることはまずない。

 多くの場合、会社は相談した使用者側の弁護士から敗訴濃厚と言われ、裁判で解雇無効となった場合の支払い額(解雇日から解雇無効判決確定日までの賃金=バックペイ)を節約するために、まったく反省することなく、単に「とりあえず解雇を撤回するから明日から出勤しなさい」と伝える。そして、労働者がまた酷い目に遭うのではないかと躊躇して出勤できないでいると、「待ってました!」とばかりに今度は「無断欠勤」「出勤命令違反」を理由に第2次解雇を通告してくるのだ。

 ブラック企業の頭のなかは、「どうせ負けるのなら、1円でも払う額を少なくしたい」という自分勝手な思考回路だけであり、だからこそ「方便的解雇撤回」が頻発しているのである。以下、私が担当した事案を紹介しよう。

 Aさんは20代の女性薬剤師で、調剤薬局を運営する会社に正社員として中途採用された。

 ところが、初出勤を数日後に控えたある日、Aさんは社長(男性。薬剤師資格なし)から自宅近くの喫茶店に呼び出され、Aさんの髪の色が一般的な社会人よりも明るいため、ヘアカラースケール7LV以下に黒く染め、業務中は束ねてほしいと告げられた。Aさんは突然の申し入れに困惑したものの、染め直す時間的猶予として出勤日を繰り延べ、その間の賃金も払うとまで言われたため、これを受け入れた。Aさんは、その後美容室に行き、染め直した髪色を社長に確認してもらい、承認を得た。

 Aさんは、薬剤師として真面目に勤務し、口頭・書面を問わず注意や指導を受けたことはなかった。薬局には社長の妻(薬剤師)である薬局長ほか数名が所属していたが、人間関係も含めて特段トラブルもなかった。なお、社長は基本的に店舗の解錠のために薬局に立ち寄る程度で、従業員が出勤する際にはすでに姿はなく、Aさんが社長を見かけたのは年に1、2回程度であった。

 1年余り経ったころ、隣のZ病院の事務長から会社に対し、Aさんの髪色が明るすぎると苦情があり、Aさんはその日以降Z病院に薬を届ける業務(1日1~2回)を控えることになった。ただし、薬局長はさして気にも留めていない様子で、Aさんはこの件についても注意・指導を受けなかった。ところがその3日後、Aさんは社長に呼び出され、髪の色を理由に唐突に解雇を切り出された(第1次解雇)。Aさんが驚いて髪の色だけで解雇するのかと尋ねると、社長はこれを肯定した。

 Aさんが、改善の機会を与えることもなくいきなり解雇するのは厳しすぎる旨抗議すると、社長は「髪のことは非常にプライベートなことなので、話し合っても折り合いがつかないと思いました」と述べ、とりつく島もなかった。Aさんはさらに再検討を求めたものの、社長は応じず、翌日以降の出社を断念した。なお、解雇理由証明書にも、主たる解雇理由として、髪の色が明るすぎることが挙げられていた。

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