『新・情報7DAYSニュースキャスター』でトンチンカンな発言を…(公式HPより)
本サイトでは先日、麻原彰晃(松本智津夫)元死刑囚ら7人を“公開処刑”するようなマスコミ報道の異常性を指摘したが、もうひとつ唖然としたことがある。それは、テレビメディアやタレントたちが、オウム事件をめぐる自分たちの責任を完全にネグっていることだ。
若い読者は知らないかもしれないが、90年代初頭、テレビを中心としたマスコミは麻原元死刑らを積極的に起用。影響の大きいタレントや文化人も、こぞって麻原元死刑囚とテレビや雑誌で対談をしていた。
その一人が、ビートたけしだ。詳しくは後述するが、たけしは冠番組の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)で麻原元死刑囚と共演、その後、雑誌でも対談し「面白いなあ、麻原さんて」などと絶賛していた。
そんなたけしが麻原元死刑囚への執行後、テレビでどんな発言をしたか。死刑執行翌日の7月7日に生放送された『新・情報7DAYSニュースキャスター』(TBS)では、一連のオウム事件を振り返るVTRが流され、スタジオでも解説トークがなされたのだが、たけしは他の出演者の話に口をはさむでもなく、相槌をうつでもなく、しばらく黙ったまま。
フリーアナウンサーの三雲孝江が「ごく普通の、なかには大変優秀な若者が、どうしてこういうカルト集団に引き入れられてしまったのか、その心理とか過程とかがまだわかっていないし、それは今の若者にも通じるいろんな材料があると思うんですね。そのへんのところを、これから検証していってほしいですね」と話し、コーナーを締めにかかると、ようやく、たけしが口を開いたのだが、その中身は極めてトンチンカンなものだった。
「官僚なんか今見ると、本当にいい成績で官僚になって、本当に間抜けなことをしているでしょ(笑)。大笑いだよね。あんないい大学出て、公務員試験にちゃんといいやつ受かって、官僚になって、トップのほうに立ってそれをするかっていう。だから学問と実際の生活は、それほどこう、ちょっと、なんだ、溝ができちゃったっていうか、これを相互に習って勉強していくもんなのに、テストのための受験のための勉強、出世のための勉強であって、社会生活のための勉強が、ちょっとこうね、こういうふうな(チグハグさを表現する両手のジェスチャー)、平行になってなくて段差がついちゃったって感じがするね」
このたけしコメントに、MCの安住紳一郎らも「うーん」と呻いてコーナーを切るほかなかったのだが、さすがに的外れすぎる。それは単に、近年指摘されているような加齢による“トーク力の低下”だけが原因ではないだろう。
たしかに、オウムの幹部に高学歴が多かったことは周知の事実で、それは散々語り尽くされていることなのだが、たけしが官僚の話をしたのは明らかにスリカエだ。オウム事件そのものについて語りたくないという、たけしの心の中が透けて見えるようではないか。
先に触れたように、たけしは1991年12月30日放送の『TVタックル』で麻原元死刑囚と初めて対談。たけしからの「ラブコール」で実現したという。
ふたりは宗教や精神世界、「死」をテーマに語り合い、麻原元死刑囚はたけしを「非常に思索力が優れたかた」「相当に深い意味での仏教観が根付いているなとびっくりしました」と絶賛。たけしが「僕の考え方だと、心が豊かになることも現世利益じゃないかと思うんですよ」などと語ると、麻原元死刑囚は「またびっくりしたんですけど、たけしさんのおっしゃることというのはチベット仏教のなかの最高の悟りに到達する道の真髄」などとヨイショした。
その後も「どんな人でも悟りを開くことができる」などとたけしを持ち上げながらオウムのPRをし続ける麻原元死刑囚に、たけしは「また場所を改めてですね、違う機会に麻原さんに対談を申し込んで、20時間ぐらいじっくりと(語り合おう)」「二人だけで朝までトークさせてくんねえかな」と同調。気を良くした麻原元死刑囚は笑顔で「要素をお持ちですから、わたしに変わって教祖をやってもらってもいいんじゃないですかね」と言い、たけしを絶賛したのだった。