もしも、これがジャニーズ事務所ではなく、弱小事務所のタレントの問題であったら、遅すぎる謝罪文は「異例の対応」などと褒めそやされることなく批判されていただろうし、謝罪会見の場に事務所のトップがいないことも非難の対象になっていたことだろう。
今回の山口達也をめぐる問題に関して、ジャニーズ事務所の対応はあまりにもひどい。
まず、その対応の遅さと隠ぺい体質だ。先月26日に行われた山口達也の会見でそれは露呈した。
会見冒頭ではまず、ジャニー喜多川社長による自社タレントへのセクハラをめぐる報道の裁判をはじめ、長くジャニーズ事務所の代理人を務めてきたのぞみ総合法律事務所の矢田次男弁護士が冒頭に挨拶を行い、「会社が知ったのはつい最近。本来ならもっと早く報告すべきだった」と述べた。
しかし、この「つい最近」というのはとんでもない嘘だ。というのも、被害届が出されたことを警察からの連絡で山口が知ったのは3月末のことで、山口自身がこのことをジャニーズ事務所に報告したのは「4月あたま」と説明したのだ。つまり、ジャニーズ事務所は山口の事件を1カ月近くも隠していたことになる。「知ったのはつい最近」とはとても言えないだろう。
この時点ですでにあり得ない対応だが、事件が公になった後の対応もこれまたひどかった。事件が報道された当日、ジャニーズ事務所は報道関係者に宛ててこのようなコメントを発表した。
〈お酒を飲んで、被害者の方のお気持ちを考えずにキスをしてしまいましたことを本当に申し訳なく思っております。被害者の方には誠心誠意謝罪し、和解させていただきました〉
全文を引用してもこれだけである。その短さは言うまでもなく、〈お酒を飲んで〉〈キスをしてしまいました〉などと事件を矮小化し、被害者への謝罪の念が感じられないのはもちろん、事務所としての責任についてはいっさい言及がない。こんな企業対応で済まされると思っているのは、ジャニーズ事務所の驕りそのものだ。