じつは吉野議員がこう発言する前日、東京電力の清水正孝社長(当時)もまた、この原子力損害賠償法の免責規定について「私どもとして、そういう理解があり得ると考えている」「資金繰りは厳しい。国の支援をたまわればという思いだ」と言及していた。吉野議員の国会質疑は、清水社長と足並みを揃えるかのような発言だったのだ。
また、吉野氏は同年、原子力規制委員会のあり方などを検討する自民党「原子力規制に関するプロジェクトチーム(PT)」座長に就任しているが、その「有識者」として、元原子力安全委員長の松浦祥次郎氏や再稼働を目指す「原子力国民会議」の宮健三代表理事といった“原子力ムラ”の代表メンバーを招致していた。そうして現在、原発再稼働に邁進する安倍政権の復興大臣の椅子に収まっているわけである。
今回、赤旗がスクープした吉野復興相の“支援者への利益誘導圧力疑惑”をみるにつけ、結局、政権は被災者やその生活のことより、自らの利益構造の温存ばかりを考えているとしか思えない。
さらに言えば、この吉野復興相の疑惑には、もうひとつ、注目したいところがある。それは、吉野大臣側の指示を受けた官僚が、上から下へ、なんら抵抗せずに“圧力”を行使したように見える点だ。繰り返すが、発注者が受注者へ事実上「特定の下請け会社を使え」と言うのは、明らかに利益誘導が疑われる。にもかかわらず、官僚たちが唯々諾々と実行に移しているのだ。
これは、大問題になっている森友・加計学園疑惑と同じ構造を抱えているということではないのか。国有地や国家戦略特区、復興関連工事というフレームの大きさだけではない。つまり、安倍首相の周辺にあまりにも強大な権力が集中していることで、どんなに放埓な指示にも官僚は「ノー」と言えず、あるいは忖度して、時に不正に手を貸してしまう。そうした森友・加計学園疑惑で露呈した構造的問題が、安倍内閣の“下っ端”にまで広がっている。そういうことではないのか。
いずれにせよ、赤旗がすっぱ抜いた吉野復興相の重大疑惑についても、今後、あらゆるメディアが徹底追及していかねばならない。霞が関が安倍政権下での歪な状況に麻痺していたとしても、いや、であればなおさら、私たちは絶対にそれを看過してはならないのだ。
(編集部)
最終更新:2018.04.05 08:28